ピルケース
要介護状態にまでなってしまうと、日常常備薬の量も種類も増えてくる。
父が存命中のこと、「薬をきちんと飲むのが面倒くさい」と言うので、調剤薬局で見つけたピルケースを購入してきた。日曜日から土曜日までの1週間分の薬を、朝・昼・晩・就寝前に分けて入れられるものである。今では100円ショップでも手に入るが、当時は1,000円以上する代物だった。
父は喜んでくれると思っていたのだが、「こういうのは、溝のところにホコリがたまりやすいからイヤだ」と言われてしまった。私は頭にきて、そのピルケースをそのままゴミ箱に捨ててしまった。
ところが翌日、見ると捨てたはずのピルケースに父の常備薬がきれいに分けて入れられていた。母が拾い出してきちんと仕分けしてくれたらしい。その後、父は自分で薬の管理が出来なくなるまで大事に使ってくれた。
今では母が同様のピルケースを使っている。父の時よりも薬の量が多いため、一回り大きい。週1回病院で出された薬を母が自らこのピルケースに仕分けする。母にとっては大仕事だが、指先で行う細かい作業もたまには必要だと思うのであえて手を貸さないことにしている。
だが、問題は入れ間違いだ。色や大きさが似たような薬もいくつかあるため、たまに間違えて入れてしまうらしい。当然数が合わなくなる。しかし、母はそれを自分のミスとは認めず、薬局が出し間違えたと言い張る。実際、仕分けしたピルケースを薬局に持っていって見てもらうと「1箇所に同じ薬を複数入れている」などの間違いがわかる。
一度、睡眠薬の数が合わなかった時は薬局も大騒ぎだった。本当に出し間違えていて在庫と数が合わなければ、始末書程度で済む事ではなかったようだ。結局は、母の入れ間違いで、日中妙にぼーっとしていると思ったら昼にも睡眠薬を飲んでしまっていたというわけだ。今では薬局で薬を受け取る際、私が全て薬の数をチェックしている。というか、チェックしてから受け取っていると母に言ってある。本当にチェックしているのは睡眠薬だけだが。
とりあえずそう言っておくことで数が合わない時は自分の入れ間違いだと認識してくれるようになった。
今は薬局も「お薬手帳」なるものを出してくれる時代なので、どの薬がどんな症状に効いているのか、手帳を見れば一目でわかる。薬によっては、服用中に納豆を食べないように、グレープフルーツを食べないように、といった注意事項も教えてくれる。歯科医で抜歯する時は、血液をサラサラにする薬の服用を止める等適格な指示もしてくれる。
介護者にとっては、薬局の調剤師さんもチームの一員なのだと思う。
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