床ずれ
寝たきりになってしまったときに、まず注意しなければならないのは褥瘡(じょくそう)、つまり床ずれのことだ。
亡き父も随分あちこちにできてしまった。まめに体位を変えるようにはしていたけれど、一日中寝たきりだし、食事をまともに摂らないからどうしても栄養不足になってしまう。栄養が不足すると、どうしても短時間で褥瘡ができてしまうようになる。肩・肘・膝・足首などの関節部分はもとより、「何でこんなところに……」という部位までアザのようになっていた。
「男性介護」の問題点
以前(4月17日)も書いたように、排泄に関することは介護する側、される側の双方にとって大きな問題だ。
特に、男性が女性を介護する場合においてはきびしい問題である。父の時でも、排泄物の処理には抵抗があったが、母の介護の場合とは、その比ではない。
母は歩行困難による要介護である。認知症の症状は出ておらず、普段は排泄に関する粗相は無いが、体調を崩したりしたときには、やはりトイレに間に合わないことがある。
そんな時、母は「このまま鬱になってしまうのではないか」というくらい激しく落ち込み、しばらくは口もきかない。そっと一人にしておけば、介護用ベッドで横たわったままに延々と泣きつづけている。
そんな母の姿を見るに付け、この時ばかりは「いっそ呆けてくれていたら」と思うほどだ。
倅としてこんなキツいことはない。
警察の対応
今から8年前の5月、亡くなる10か月前に父は自宅の屋上から飛び降り自殺を図っている。
休日の午前中、父の見舞いに来るという姉夫婦を近くの駅まで車で迎えに行く途中、母から連絡があり、屋上から飛び降りたことを知らされた。寝たきりになって一人では歩けないはずの父が「トイレに行きたい」と言うので、知的障害のある弟が体を支えてトイレに連れて行った後、弟を振り払って階段を屋上まで上り、飛び降りたという。
老障介護
最近、老老介護という言葉を耳にする。
共に高齢者である 夫婦・親子・兄弟間で介護する側とされる側になっている状況を指している言葉だ。
ウチの場合は“老障介護”である。
主介護者である私が家を空けるようなことがあれば、その間は要介護3で身体が思うようにならない母親と、「愛の手帳(東京都療育手帳)」3度(中度)の知的障害をもつ弟が、お互い行き届かぬ部分を補いあって生活している。弟は知的障害があるとはいえ、洗濯・掃除などの家事はこなしてくれるし、外からの電話や来客は母が応じてくれる。
以前は、事情を知る知人から「ご苦労されていらっしゃいますね」などと声をかけられると、「苦労はしていますが、世間には珍しくもない程度です」とうそぶいて、ちょっとした自己陶酔に浸っていた。