介護生活のはじまり
2008年04月10日 09:00
私が介護生活に入ったのは約10年前、亡父の老人性鬱病が本格的になってからだ。鬱の原因となったのはその9か月前に父が50年間一緒に仕事をしてきた人間から裏切られたことだった。
当時、営業職をしていた私は一般のサラリーマンに比べれば時間はとりやすい状況にあった。
自宅からそう遠くない場所で仕事をしていたある日のこと、母から「お父さんが苦しがっている」との連絡を受け、急遽帰宅してみたところ、持病である狭心症の発作を起こしていた。あまりに苦しそうなので救急車を呼び近くの病院に搬送した。
その場は母に任せ、仕事に戻ったが、小一時間して再び母から連絡があり、父が病院で暴れているとのこと。ベッドの上に立ち上がり「もう大丈夫だから家に帰らせてくれ!」と言ってきかないそうだ。すぐ病院へ引き返したが、結局担当医の診断で「不安定な血圧と不整脈などから発作が起きやすい状況にある」と言われ、強引に入院させることにした。
今思えば(と、考えてしまう事は非常に多い)、生命の危機を感じていた父は、ひたすら「家で死にたい」と願っていたのだろう。
「家で死にたい」「病院で死にたい」というのは人それぞれの価値観で違うものだろう。これまで私が立ち会ってきた親族・知人の今際の際はほとんど病院だった。
父にとっては介護状態にあった3年間、一番の心配事は「自分の家で死ねるだろうか?」であったかもしれない。
その後、亡くなるまでの3年間、狭心症、肺炎、胃潰瘍、硬膜下血腫等で入退院を繰り返した。施設でのショートステイも幾度となく経験した。そんな中で、自宅で最期を看取れた事には私自身満足しているし、父にとっても本望だったろうと勝手に理解している。
(K)
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