介護技術を日常に応用する発想
これまで、具体的な介護技術を紹介してきました。見た目の手順ではなく、目に見えない身体の使い方の工夫に最も重点を置いて解説するように心がけました。
常々思うことですが、介護の技術しか役に立たないと思われてしまっては、実にもったいないことです。家庭介護や施設・病院での介護など、家族としてか職業としてか、介護への関わり方には様々あるでしょう。
せっかく実践の中で身につけてきた介護技術が、介護をやめたとたん、用なしになってしまう現実はありませんか? しかし、身体の使い方の工夫という根本を押さえていれば、形は変わっても、介護技術を通して学んだことが無駄にならず、日常生活でも応用できるようになります。
例えば、育児。赤ちゃんの抱っこで、肩や腰を痛めてしまうお母さんは実に多く、大きな問題になっています。何だか介護の問題と似ているなと思いませんか。赤ちゃんと高齢者、身体の大きさに違いはあるものの、抱える動作は両者とも共通しています。これまで様々な介護技術に活用してきた、「手の甲から抱え、手首から先を返す」動きが活用できます。腕だけで持たずに、背中全体を中心に身体全身を使うことで、負担が軽減されるわけです。
そんな考え方を広げていくと、今は引越しのシーズン。引越しでの荷物の持ち方にも応用ができるでしょう。ダンボールを持ち、タンスを抱え、運び、上げたり下ろしたり。人と物の差はあるものの、これまた動きの質は共通していることに気がつくでしょう。
介護技術だけを追求するよりも、そんな発想が生まれてくることが重要ではないでしょうか。教えられたことしかできない、マニュアル的な発想がとかく批判を受けています。しかし、最初のきっかけとしては、マニュアルは有効だと思います。いきなり、ゼロからオリジナルを作れと言われても戸惑うばかりですから。
その上で、マニュアルを絶対視せずに、あくまでも参考にしながら、介護を受ける方、介護をする方、お互いに優しい技術を作り出す、つまりオーダーメイドの介護技術を作るために、「身体の使い方」という視点を持っていただければと思います。
その視点があれば、形はどのようにでも変化していきます。介護だけではなく、日常生活にも広がっていく柔らかな発想こそが、閉塞感のある介護の現場に必要とされてくるのではないかと考えています。
※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。