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岡田慎一郎の「古武術介護のトリセツ」

体感身長・体感体重に惑わされないために

 ある施設研修での出来事です。「全介護状態で身長は180cmぐらい、体重も80kgぐらいある方」の車椅子からベッドへの移乗介助について質問されました。
 その後、実際に質問のあった利用者さんの居室にうかがって、介助のアドバイスをさせていただきました。介助を行ってみて、180cm、80kgというのはオーバーじゃないかなと思い、実際の身長、体重を調べてもらったところ、なんと167cm、54kgしかなかったのです。

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 体感温度という言葉があります。温度は30度でも、湿度が高い場合はかなり暑く、湿度が低ければそんなに暑さを感じないというように、体感する温度のことです。
 介護の場合でも、重度の方だと実際の身長、体重以上に大きく感じてしまうということが多くあると思います。例えば、拘縮や麻痺があるため、動きを引き出しにくいなどで、十分に介助動作が行えないときには、見た目以上に大きく、重く感じやすいと思います。私は個人的にそれらのことを「体感身長、体感体重」と呼んでいます。
 ところが、この体感身長、体感体重は、実際の身長、体重に近づけることが可能だと思います。実は、われわれの技術や身体の使い方のさらに以前の問題で、50kgが80kgに感じてしまうようなことが起きています。代表的なものは次の2つです。

(1)足底が接地していない
(2)足底が接地していても、十分に体重が乗っていない

 今回のケースは、利用者の方の足がきちんと接地しておらず、脚力が出せなかったことにより、吊り上げる状態で介助していたことが原因でした。
 落ち着いて、足をしっかりと床に接地させ、足底に体重が乗った状態で介助したところ、利用者自身の動きを引き出すことが可能となり、双方の負担も随分と軽減されました。
 このような、よく考えると単純なことが意外にも介護の現場で見過ごされていることが少なくありません。確かに多忙な現場ですが、少し立ち止まり、見直してみると、こうした例はいくつも出てくるでしょう。
 このブログでは普段、あまり扱われることが少ない全介助の技術を中心に紹介していますが、やはり介護の基盤は相手の方の動きを最大限に引き出すことです。ついつい力まかせにして「重い、大きい」と感じていたのは、実は当たり前のことが当たり前でなかったことが原因かもしれません。
 難易度の高い技術を求めることも大事ですが、まずはその前に、当たり前のことを確認するのが大前提だと言えるでしょう。それを実感した研修でのひとコマでした。


コメント


それもできない利用者さんは難しいですね。
足の変形、体重を乗せられない、前方接近ではひっかく、つねる、かみつくなどがあり、ついつい力任せで、気の毒と思いながら背後から力任せです。いい方法があればいいのですが。


投稿者: のじ | 2012年07月16日 20:42

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プロフィール
岡田慎一郎
(おかだ しんいちろう)
介護支援専門員、介護福祉士。1972年生まれ、茨城県出身。身体障害者施設、高齢者施設の介護職員を経て、朝日カルチャーセンター等の講師を務める。武術家甲野善紀氏との出会いにより編み出した、古武術の身体操法に基づく介護技術(古武術介護)で注目を集める。著書に、『親子で身体いきいき古武術あそび』(日本放送出版協会)、『古武術介護入門』(医学書院)、雑誌掲載など多数。(タイトル写真提供:人間考学研究所)
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