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岡田慎一郎の「古武術介護のトリセツ」

スタートは身体から

 11月11日が「介護の日」ということで、今回はそれにちなんで、介護に対する私の考え方をお話ししたいと思います。

 現在、介護が置かれている環境はこれまでにない厳しさだと思います。介護保険などの制度的な問題、低賃金、重労働などによる介護職の離職、老老介護をはじめとする家庭介護の深刻化など、数え切れない様々な問題が次から次へと押し寄せてきています。
 そんな中、どこから手をつければ良いのかわからず、途方に暮れてしまっているのが現状のように思えます。どれも深刻で、一朝一夕に解決できるような簡単な問題ではないのですから。そうかと言って、「介護はやはり心!」と極端な精神論に行ってしまうと、かえって解決から遠のくことにもなるでしょう。やはり、具体的な方法論を探らなければなりません。

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 私は、もっとも身近なところからはじめてみてはと思います、それは我々の「身体」を見直すことからです。私のある経験を紹介しましょう。
 小児麻痺の障がいを持つその女の子は、車椅子からベッドに移乗を介助するたびに、
 「ごめんね、私が重いから大変でしょ。ごめんね、腰痛くない?」
 と、いつも「ごめんね」を連発していました。
 「なんでそんなに謝るの。自分は全然きつくないし、重くなんかないから平気だよ」
 そう言うと、少しホッとした表情を見せました。
 「私でも大丈夫なんだ。よかった、安心した。でもね、私を介護する人達って次々に腰を壊して、いつも辛そうな顔をしているから、本当にすまないなぁって…」
 と、いつも介護を受けること自体に負い目を感じながら、介護者と接していることを打ち明けてくれました。
 気兼ねしながら介護を受ける、また腰痛に耐えながら介護をする関係、これらは現在多く見られることだと思います。もし、これらの身体の負担が解消されたら、解消といかなくとも、今よりも数パーセントでも軽減出来たら。それには、精神論からはいるのではなく、根本的な動きの質の改善という、極めて具体的な実践をする必要があります。そして、それらが機能した時、介護者ばかりか、介護を受ける方も気兼ねなくなり、肉体的、精神的な負担も軽減されるでしょう。
 私は、様々な問題が山積みの現在の介護において、もっとも具体的な解決策がある、「身体」から考えてみてはと感じています。その一歩として、介助技術を通して身体の動きの質的改善を提案しています。その実践を本ブログで展開しています。脳も身体の一部です。
 まずは身体からスタートしてみましょう。介護の見え方が今日よりちょっと変わるかもしれません。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
岡田慎一郎
(おかだ しんいちろう)
介護支援専門員、介護福祉士。1972年生まれ、茨城県出身。身体障害者施設、高齢者施設の介護職員を経て、朝日カルチャーセンター等の講師を務める。武術家甲野善紀氏との出会いにより編み出した、古武術の身体操法に基づく介護技術(古武術介護)で注目を集める。著書に、『親子で身体いきいき古武術あそび』(日本放送出版協会)、『古武術介護入門』(医学書院)、雑誌掲載など多数。(タイトル写真提供:人間考学研究所)
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