技術以前の身体の使い方(4)姿勢
腰痛問題と切り離せない体の使い方として、最も重要となってくるのが今回取り上げる「姿勢」です。
介護時に姿勢を意識するのは、車椅子やベッド、トイレでの移乗介助でしょう。その中でも特に、全介助状態の方への移乗介助はどうしても力が入り、腰痛の危険性も高まります。
そんな時、「背筋を伸ばして腰を曲げないように」と注意を受けた方も少なくないかもしれません。写真1を見てみましょう。確かに我々がイメージする「良い姿勢」です。
(写真1)
しかし、腰に反りがあるため、重さが腰一点にかかりやすく、実は危険をはらんでいます。
それでは、腰への負担を減らす姿勢はどのようなものでしょうか。写真2ですが、写真1とは対照的に胸は窪んで、腰は丸まっています。
(写真2)
ちょうど気をつけの姿勢に対して猫背気味にも見えます。「かえって腰を痛めてしまう姿勢では」と一見思うかもしれません。
たとえれば、気をつけの姿勢は一本の棒であり、棒の上に重りを落とせば、ポキッと折れてしまいます。ところが、猫背気味の姿勢はジグザグ状で、ちょうどバネの構造に似ています。バネの上に重りを落としても、重さは一点にかからずに全体に散ります。
つまり、猫背気味の姿勢は腰一点にかかりやすい負担を全身に散らす構造を持っているのです。
これは介護の姿勢だけでなく、スポーツでもよく見られます。たとえば、バレーボールのレシーブも気をつけの姿勢ではなく、よく見ると猫背気味な姿勢です。バスケットボールのドリブル、ボクシングの構えなど、実はほとんどのスポーツの動きにおいて、胸を張って背筋を伸ばしていることは少ないように思います。
気をつけの姿勢とは文化的・精神的に良い姿勢であり、猫背気味の姿勢は機能的に良い姿勢といえます。
腰痛問題の大きな原因の一つが、精神的・文化的に良い姿勢と機能的に良い姿勢の混同ではないかと考えています。
今回紹介した機能的な姿勢が今後、実際の介護技術にどのように生かされるか注目してみてください。
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