少しずつ出来ることを増やしていくこと
前回、介助技術が出来るようになるためには、講習や本の内容をそのまま真似をするのではなく、自分に合わせた工夫をしながら、オーダーメイドの技術を作り上げていくことが重要とお話をしました。
そうなると、一体いつになったら出来るようになるんだと、不安になられる方もいるでしょう。確かに、前回は「いつになったら出来るのか?」という問いに答えるはずでしたが、見方によればまったく答えになっていませんでしたから(苦笑)。
そこで、「出来る」とは何かを考えてみましょう。
おそらく、座り込んだ状態の方を力みもせずに立ち上がらせたり、全介護状態の方を車椅子からベッドへラクラクと自在に移乗させるのが「出来る」ことだと、大多数の方が思われているでしょう。しかし、それを「出来る」状態にしてしまうと、ほとんどの方は途方に暮れることになるでしょう。出来たらいいけど、私には無理だなぁ…と。
そこで、「出来る」のルールを変えてみましょう。
いきなり移乗動作が完全に出来なければいけないのではなく、そのごくごく一部の要素でも出来たら、それを「出来る」ということにするのです。
ついつい我々は欲張りになってしまい、すぐに劇的な変化が起きないかと期待をしてしまいますが、それはよほどセンスが良い人でなければ難しいでしょう。
例えば、相手を抱える動きがいつもよりスムーズになったということが起きたなら、それは、「出来た」ということです。そんな小さな成功の積み重ねが、大きな「出来た」を呼び寄せてくれるのだと思います。そう考え、技術を練習、実践していくと、毎回が「出来た」の連続になり、介護をする楽しみも生まれてくるでしょう。ルールを変えれば、それは、今からすぐにでも変化が起こるということなのです。
実際に私の技術を取り入れて在宅介護をされている方のご自宅にうかがった際、
「すべてを真似することは私には難しいので、手のひらを返して力が出せることなどを自分なりにアレンジして取り入れています」
とおっしゃっていました。実際に介助する場面を見させていただきましたが、現時点で出来ることを存分に工夫されていることがよく分かりました。そして、日々の技術の進歩だけでなく、体の動きが変化していき、介護で体を痛めていたことが嘘のように、介護をすることによって体が適切に鍛えられていくことを実感しているとのことでした。このような例は、きちんと取り組んでいただければ、誰にでも起こりうる進歩だと思います。
10月からはいよいよ実際の体の使い方を中心に技術を紹介していきたいと思います。
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