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岡田慎一郎の「古武術介護のトリセツ」

どのぐらいの期間で出来るようになるのか!?

 講習会や本の技術で必ず聞かれることに、
 「どのぐらいしたら古武術介護が出来るようになりますか?」
 というものがあります。
 古武術という響きに、「秘伝」や「気の力」や「裏技」なんかがあるのではと期待したものの、そのようなものは予想外になく、地道な取り組みが必要だと分かった時に、つい聞きたくなってしまうのでしょう。
 そんな質問に私はこう答えています。

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 「たった2時間の水泳の講習を受けただけで、25mを泳げるようになるとは誰も思いませんよね。介護でもまったく同じことです。でも、いったん泳げる感覚が出来れば、体が動く限りは忘れることなく一生泳げるでしょう。介護も筋力に頼らない、体に負担をかけない動きの感覚が身に付けば、それは一生ものの財産になります。ただ、水泳も介護も出来るようになるスピードは千差万別です。どうか、自分のペースで取り組んでください」
 水泳の例えは、しっくりとくるという以外に、実は個人的な体験もあるのです。
 私は小学校4年生から、あまりにも運動神経が鈍いため、せめて水泳ぐらいは泳げるようにと、スイミングスクールに通っていました。同時期に妹も通い始めたのですが、妹は選手コースにまで進む出世ぶり。しかし、私はというと、6年生でも3、4年生と同じコースというありさま。さすがに落ち込みました。
 ところが、中学生になり、習っていなかった平泳ぎとバタフライが、自分で工夫するうちに2か月程度で泳げるようになり、3年間かかって泳げるようになった背泳やクロールよりも、得意になり、平泳ぎでは中学校で一番となってしまいました。
 このころから、習ったことをそのままするよりも、自分なりの工夫を交えた方が良いのではと思うようになりました。
 介護でも講習会や本の内容をそのまま再現しようとすると、かなり困難を感じるでしょう。しかし、だからこそそれらに拘らず、自分に合った方法を見つけようとしてみてください。
 例えば、全部は出来なくても、一部だけいつもの介護技術に取り入れてみるなど、自分に出来るところからしてみてはいかがでしょうか。そんな取り組みを続けているうちに、いつの間にか、筋力に頼らない感覚が芽生えてくるのだと思います。そして同時に、自分自身に合った、オーダーメイドの介護技術が作られていくはずです。


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プロフィール
岡田慎一郎
(おかだ しんいちろう)
介護支援専門員、介護福祉士。1972年生まれ、茨城県出身。身体障害者施設、高齢者施設の介護職員を経て、朝日カルチャーセンター等の講師を務める。武術家甲野善紀氏との出会いにより編み出した、古武術の身体操法に基づく介護技術(古武術介護)で注目を集める。著書に、『親子で身体いきいき古武術あそび』(日本放送出版協会)、『古武術介護入門』(医学書院)、雑誌掲載など多数。(タイトル写真提供:人間考学研究所)
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