脱マニュアルのために
講習会を行う時に、私は必ず言うことがあります。それは、
「ここで紹介した技術は私なりの考えのもので、皆さんは真に受けず、あくまでも参考にして自分の技術を作るための「素材」として活用してください。」
ということです。
通常、私たちは講習会や何かを学ぶ時には、課題として出されたものを何とか出来るようにしようと頑張ります。そして、出来たものを基盤に次のステップへと進んでいきます。
介護技術の場合も同じと言えるでしょう。しかし、数時間の講習会で出された課題技術が全て出来るようになるのは、よほど才能がある人以外は困難だと思います。
そして、それらの技術が講習会で出来たからといっても、介護の現場で使いこなせるかというと、現場はそんなに甘くないと誰もが思われるでしょう。
そこで、学び方自体、いままでとは違う取り組み方をする必要があると思います。たった1回の講習会を最大限に活用するためにはと考えた方が良いでしょう。
「片麻痺の方であればこんな技術でしましょう」「パーキンソン病の方ならこんな技術をしましょう」というマニュアル的なパターンだけを覚えてしまっては、現場で例外が生じた時に対応しきれなくなってしまいます。
本や講習会で習うパターン(技術)がそのまま当てはまる方は限りなく少ないということを、現場で介護に携わる方のほとんどが感じているのではないでしょうか。マニュアル的な取り組みにこだわっていると、いたずらに時間ばかりが過ぎてしまいますし、介護を受ける方の状態も日々変化しています。マニュアルに当てはめようとすることは、流れる水に印をつけようとするくらい難しいことです。
だからこそ、マニュアル的に捉えるのではなく、講習会で紹介した技術は「素材」として捉えて欲しいと思います。
「素材」とは、技術としての形ではなく、身体の動かし方の原理です。
料理でたとえれば、野菜や肉、魚などの食材があり、それらを基に料理が作られていくでしょう。介護技術も身体の動かし方という素材があり、それらを現場で介護を受ける方の状況に合わせて、いかに「料理」して提供できるかということが重要になると思います。
マニュアル的に覚えた技術を当てはめてしまうのではなく、介護を受ける方にぴったり合った、オーダーメイドの介護技術を作るという発想があると、受身ではない、講習への積極的な参加ができるようになるのではないでしょうか。
そして、結果として介護を受ける方にとっても、自分らしい介護を受けることにつながっていくと思います。
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