介護以外にも広がる身体の活用
前回は古武術介護とはニックネームであり、その本質は実践的な身体運用理論であり、野球チームにたとえれば身体運用は「監督」、介護技術は「選手」というお話をしました。
そう考えると、チームの選手は介護技術だけでなくてもいいのではと、思えないでしょうか。野球でも、ピッチャーをはじめキャッチャーや内野手、外野手、それぞれが役割を持ってチームが機能しています。
身体というチームがあるとすれば、介護技術はチームの一選手であり、それ以外にも、身体が行う動きの数だけ様々な選手が現れてくるでしょう。
それは身体運用という視点を持つことにより、介護だけではなく、様々な動きに応用することが可能になるということなのです。
例えば、育児の動き。やさしく言えば赤ちゃんの抱っこをすることで身体を痛めてしまうお母さんが少なくないという事実があります。そこで、身体の使い方を工夫することで、身体を痛めない動きが引き出されてきます。育児の動きをよく見ると、介護の抱き上げる動きなどと共通する点も多くあります。つまり動きの質的には共通していると言えます。
また、日常生活の動きの中でも負担をかけない身体の使い方は様々な場面で活躍するでしょう。布団の上げ下ろしや、重い荷物を運ぶ、掃除、洗濯など身体を使う場面であれば全てがその対象となるはずです。
そして、身体運用理論という監督はスポーツや音楽、ダンス、演劇などの「選手」を指揮することにも効果を発揮してくるでしょう。
そうなると、介護だけにしかこの身体運用を使わないというのは非常にもったいない話になります。ですから私は、講習会を行う時には、
「介護だけに拘らないで、身体を動かすこと自体の質を変えていくことを普段から意識して、しかも楽しんでしていければ、動きそのものが変わり、結果として自然と介護の動き自体も質的に変化がしていきます」
と言っています。介護だけにしか活用できない動きというのは、極端な話、介護をやめてしまうと途端に役に立たないものになってしまうでしょう。しかし、介護を超えて、身体の動きそのものを変えるという視点を持つと、視野も広がり、介護そのものに楽しみも見出せるのではないかと思います。
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