古武術介護とは身体の監督
前回は古武術介護とはニックネームであるということをお話ししました。今回は、その本質は何かということを伝えていきたいと思います。
私は足掛け3年以上にわたって介護技術の研究会を毎月行っています。しかし、その介護技術の研究会はとても変わっていて、介護技術をほとんどしないのです。その代わり、いかに筋力に頼らず、身体に負担をかけない動きが出来るかということを、楽しみながら取り組んでいます。
そのため、歩く、走るなどを工夫したり、または一見すると力比べのような遊びをしたり、棒などを使って武術風の動きをしてみたりと、初めて来た方は「介護の技術をしにきたのになぁ~」と戸惑うようです。ましてや、取材に来た方は「頼むから介護技術をしてください」と目で訴えてきたり(苦笑)。
どこが介護技術の研究会なのかと思われるでしょう。実は目先の介護技術にこだわらず、動きの質を改善することにより、自ずと介護技術も変化していくという考えが根本にあるからなのです。
例えば、優秀な選手を集めた野球チームがあるとします。しかし、監督の方針がしっかりせず、選手起用が上手く機能しなければ、優秀な選手であっても力を発揮出来ず、その結果、チームの成績も低迷してしまうでしょう。
反対に飛びぬけた選手はいなくとも、監督がしっかりとチームをまとめ、個々の選手の力を引き出せれば、チームとしての実力は自ずと伸びてくるでしょう。
介護技術で言えば、監督は身体の動き、選手は介護技術ということになります。いくら良い技術(=選手)があっても、それを使う身体の動き(=監督)が伴っていないと上手く機能しないということになります。
古武術介護の正体は、実は技術そのものではなく、今までの筋力とテコを中心とした動きから、筋力に頼らず、テコ以外にも様々な工夫をこらした動きをする、いわば実践的身体運用理論です。
つまり、身体の動きを指揮する監督を入れ替えたといえるでしょう。以前と同じ選手=介護技術はそのまま残っていますが、動きの質が以前と比べて良くなっているため、自然と介護技術そのものも進化していくでしょう。
だからこそ、今までの技術を批判、否定することなく、しかも今までの技術や経験を捨てずに、さらに向上させるのが古武術介護の目的であり本質なのだと私は思っています。
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