技術は場所を選ばず誕生する
ホームヘルパー講座で雑談的に紹介した介助技術は、授業アンケートの中で
「教科書には載っていないあの技術をもっと知りたい」
という記入が多くあり、主催者側も実践技術講座を特別に開講してくれました。
意外にも多くの方が参加し、現場の困難事例をいかにして負担が少なく介助するかということを、現場の知恵とともに武術的身体の使い方も取り入れて、研究会のような雰囲気で行いました。
“介護を受ける方に合わせて、その場で介護技術を作り上げていく”
そのスタイルは現在の活動の基盤となるものでした(だからこそ、先週のブログで書いた、モーションキャプチャーの実験で、環境に合わせて工夫できなかったことが悔しく思われました)。
そんな講習会も開くようになったある日、甲野師範の講習会に参加し、帰り道に師範と初めてお話をしました。
「甲野先生がされている介護技術の要素を生かして介護の授業に取り入れていますがよろしいでしょうか」
「それはどうぞご自由に使ってください。私がしていることはあくまで参考ですから、いろいろと工夫してもらって使ってもらえれば」
と快く私の活動にも理解を示してくださいました。
「ところで今度、テレビ局から介護の技術をしてほしいといわれたんだけど、あなたも一緒にどうですか?」
あまりにも意外な展開にきょとんとしつつも、テレビの収録にご一緒させていただくことになりました。
収録スタジオでは、他の介護の先生もいらっしゃり、またVTRでも様々な介護技術を取り上げ、腰痛にならない介護法をテーマに番組は進行していました。
待ち時間の間、甲野師範と身体を痛めてしまう介護の技術や現場の状況をじっくりとお話しすることができました。
そんな中、甲野師範がふとひらめいたように、
「今、これはできるかなと思って…」
と言って、椅子に座っている私の前に立ちました。そして腰を手の平から包み、片足の膝裏に手をかけ、そのまま私を椅子から抱え上げてしまったのです。
まさか、こんな体勢から抱え上げるなんてと驚きました。それ以上に自分の体重が消えたようなくらい、心地よくふわりと抱え上げたことが衝撃的でした。
技術は介護の現場で生まれるだけではなく、場所は選ばず思いついたらどこででも生まれるんだなと、師範自ら示してくれたことが何よりも嬉しく、これが“背中で教える”ということなんだと実感した瞬間でした。
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