古武術介護なんて無い!?
ここまで、「古武術介護」の成り立ちを介護との出会いから紹介してきました。
ここで、正確に伝えておきたいことがあります。
実は「古武術介護」というものはないと思っています。
私が身体運用を学ばせていただいている甲野師範は古武術の継承者ではなく、あくまでも古武術をはじめとする他の流儀や異分野との交流を参考にして独自の武術を研究実践しています。
正確にいえば、「創作武術」といえるでしょう。しかし、古武術を参考にしたということや、現代武術とは違うということで、「古武術」としてマスコミに取り上げられることがほとんどです。
そのことからも「古武術介護」は本来ならば「武術的身体運用を参考にした介護技術」というべきだと思います。
しかし、それではタイトルとしてはインパクトが弱いし、マスコミ的には「古武術介護」のほうが、多くの人に興味を持ってもらえると考えるでしょう。
はじめての単独講座
2004年の秋ごろだったと思います。
甲野師範の道場で、少人数での稽古会に参加したときのことです。
その日は主婦の参加者の方が多く、話の流れから介護の技術をすることになりました。
そこで、自分が工夫した方法をいくつか紹介すると、思いのほか興味を持っていただき、
「講座を持ったらどうか」と薦めてくださる方もいました。
数日後、その方からメールをいただきました。カルチャーセンターで介護の講座を開いてみないかという誘いでした。社交辞令だと思っていたので、本当にそう思われていたことにびっくりしました。
教えられるのではなく、学ぶこと
テレビ局の収録空き時間に、ふとしたことから椅子から抱え上げる動きを創り出した甲野師範。
実際にその場に居合わせ、技術を受け、説明もしてもらいましたが、
「こんな練習をしなさい」
「この技術はこのように使用しなさい」
といった「教え」は一切ありませんでした。
講習に行くと、よく聞かれることに、
「岡田さんは甲野先生から、マンツーマンで特別な教えを受けているんですか?」
ということがあります。
しかし、そのようなことは一度もなく、一般の講習会参加者と変わらないと思います。
技術は場所を選ばず誕生する
ホームヘルパー講座で雑談的に紹介した介助技術は、授業アンケートの中で
「教科書には載っていないあの技術をもっと知りたい」
という記入が多くあり、主催者側も実践技術講座を特別に開講してくれました。
意外にも多くの方が参加し、現場の困難事例をいかにして負担が少なく介助するかということを、現場の知恵とともに武術的身体の使い方も取り入れて、研究会のような雰囲気で行いました。
“介護を受ける方に合わせて、その場で介護技術を作り上げていく”
そのスタイルは現在の活動の基盤となるものでした(だからこそ、先週のブログで書いた、モーションキャプチャーの実験で、環境に合わせて工夫できなかったことが悔しく思われました)。
そんな講習会も開くようになったある日、甲野師範の講習会に参加し、帰り道に師範と初めてお話をしました。