基本技術は本当に使えないのか!?
ヘルパー講座で、雑談として、武術の動きをヒントにした介護技術をしたところ、受講生の皆さんの反応は想像以上にありました。
「だって、テキストの技術って現場じゃ通用しないでしょ」
ある受講生の方は自身の現場の体験を踏まえて言い切りました。
「よく職場の研修で介護の基本技術って教えられたけど、誰もまともに取り組まなかったよね。今回もヘルパー資格を取るためだと割り切って来たから、期待なんてしてなかった。でも、この技術は初めて現場で通用する希望があるんじゃないかなと思えましたよ」
その当時は自分も考えが浅かったため、教科書的な基本技術は、いわば机上の空論だと考えていました。現場から見たら、そんなところもないとは言い切れないかもしれません。
例えば、ベッドや車椅子からの立ち上がり技術。教科書的には被介助者は介助者の肩に手をかけて、お辞儀をしながら誘導にしたがって立ち上がるというもの。
現場的にはここまでしてくれる、自分で動いてくれるような方ならそんなに苦労もしない。現実は動きたくても動けない、そんな方を身体を痛めながら日々介護している。だから、教科書の技術なんていらない、と。この技術を形もそのままに全介護状態の方に使用したら、それは無理があるでしょうし、自らの腰痛の原因になってしまいます。
しかし、批判されがちな基本技術ですが、私はそんなに悪いものではないなと思います。それどころか、基本技術はこれまで研究の蓄積なのだから、使える部分はどんどん使うべきだと考えています。
ただし、形をそのまま使うのではなく、あくまでも「要素」を介護を受ける方の状態に合わせて使うという条件がつきます。
どんなに優れた技術であっても、全ての方に通用する万能のものはありません。だからこそ、目先の形を活用するのではなく、どんな場合にも通用する「要素」を抽出し、介護を受ける方に合うように介護技術を創造していく発想が重要だと思うのです。
立ち上がり介助であれば、お辞儀をして立ち上がるという、基本動作は全ての動きに活用できる「要素」となります。
基本技術がいけないのではなく、使用する側の発想が不足していた側面があるのではないかと、最近特に痛感しています。その「要素」を活用していくために必要となったのが「身体運用」という視点でした。それを教えてくれたのが武術の身体の使い方だったわけです。
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