筋力でない技術の味わい
長座(足を投げ出して座った状態)から立ち上がらせる技術「添え立ち」は、何度行っても力まかせになり、ふわりと力感なく立ち上がらせるのはまったくできませんでした。
しかし、何とかできるようにしようと、日常生活の中でも技術の要素を使うことを積極的に行うようにしていました。
現在、講習会でも添え立ちはなかなかうまくできない方が多く、もっとも難しい技術の一つといえるでしょう。ただし、できた時の感覚は今までとまるで違うため、参加者の方も非常に熱心に取り組んでいます。
ただ、熱心すぎて、ついつい無理をしてしまい、数は少ないですが腰痛になってしまう方もいます。せっかく、腰痛などにならない技術を求めてきたのに、非常に残念なことです。
腰痛になってしまう方の特徴として、ついつい頑張りすぎて、とりあえず相手を立ち上がらせてしまおうと筋力で行ってしまった、その結果、腰痛につながってしまった、という方がほとんどです。
周囲にできる人がいると、どうしても気持ちが焦り、形だけでも何とか間に合わせようとしてしまいがちです。してはいけないことですが、人の心情としてはやむを得ないのかもしれません。
特に介護職としてキャリアのある方ほど、その傾向は強いように思えます。
実際に腰痛になった方は、なぜか指導的な立場の方が多いのです。
やはり、「できない自分を許せない」というプロとしてのプライドが、この場合は裏目に出てしまったのでは…と考えます。
私の場合は、まったくできない時期が半年間くらい続きました。現在のように情報も少なかったので、手探りで自分に合う身体の動きを求めて、様々な方からアドバイスをいただきながら、少しずつ身体の動きが変わっていくのを実感していきました。
初めて添え立ちができた時の感覚は、ちょうど自転車に乗れたときのような感覚でした。
今までできなかったことが嘘のように、あっさりできてしまったことを覚えています。
ただし、できたといってもそれは練習でのことであって、実際に現場で活かすとなると、また違うと思います。介護を受ける方々の状況に合わせて、技術をオーダーメイドできる発想と技術が備わって、初めて使える技術となるものですから。現在でも、私は発展途上で、少しずつですが、変化を続けています。
皆さんの場合、現在の私の位置からスタートできると思います。つまり、私が持っているノウハウを使えるからです。そして筋力ではない「味わい」にこだわりを持ってもらえれば、形だけ何とかしようという気持ちは薄れ、動きの質を高める練習になっていくのではないかと思います。
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