格闘技式介護の波紋!?
実戦空手のクリンチ(相手に組み付く技術)が介護技術に活用できて、しかも介護をする側、受ける側双方に負担がかからないというのは大きな発見でした。
ちなみに、空手の中でもグローブをつけて顔面の打撃もありの「グローブ空手」(キックボクシングに近いルールのもの)の時にクリンチは特に有効でした。
グローブをつけていると、手で相手をつかむことはできませんから、何とか全身をうまく使い相手を抱えてクリンチしようと、頭ではなく体が考えようとします。すると、意外にも力まかせではない動きになってきたのです。とはいっても、なぜこの動きが楽にできるのかということまで頭と体、両方で考えるまでには当時はまったく至っていませんでした。しかし、まずは下手に頭だけで考えるより体を通した経験ができたというのは、後から振り返っても良かったと思っています。
実は、クリンチの動きにはレスリングのタックルの動きも生かされていました。どちらかといえば、タックルの要素が入ることにより、相手を今までよりも楽にコントロールできることが多くなったことが、介護よりも先に起こり、そこから介護への活用が始まったのが正確なところでしょう(実際にクリンチする時には殴られ蹴られて息も絶え絶えの状態でしたが…)。
施設ではその当時、腰痛を抱えながら勤務する職員が少なくありませんでした。特に大柄な方の移乗(ベッドと車椅子間、機械浴へのストレッチャー移乗)などは負担がかかる介助でした。ところが、そんな状況こそ自分が役に立つ場面だと思い、積極的に介助を買って出ました。
「岡田、細いのに何でそんな力があるの?」(私は167cm、57kgでした)
と驚かれることがよくありました。そこですかさず、格闘技の動きを応用したと言うと、
「格闘技は人を攻撃するもので、あんまり良くないことじゃないのかな…」
中にはそんな反応をする人もいました。
確かに、格闘技と介護では目的が正反対ですから、そう思った人を一概には批判できません。しかし、そこで大した議論になることもなく、
「まぁ、利用者さんも楽だと言っているし、困った時には案外役立ってるから。岡田の馬鹿力もいいんじゃないの」
そんな感じで落ち着いてしまいました。当時は施設がオープンしたばかりで、日々の業務をこなすのに精一杯という時期だったので、それが幸いだったのかもしれません。
ということで、今回のタイトル「格闘技式介護の波紋」、実は何もなかったんです(苦笑)。ただの「馬鹿力」で終わってしまい、それが技術によるものとは誰も気にもしなかったのです。自分自身、当時はやはり最後は筋力勝負という考えがあったので、「馬鹿力」でもいいかと思っていました。
筋力勝負とは違う世界に出会うのは、実にここから10年も先の話なのです。
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