何も知らずに介護へ
福祉人材センターから紹介されるがまま、運よく新設の重度身体障がい者施設に就職。
高校時代、職業適性検査で「対人関係の仕事が向いている、営業職、医療、福祉関係など」と書かれていたこともあり、まぁ何とかなるだろうと思っていました。
ところが行ってみると、そんな甘えた気分は一気に吹き飛びました。
例えばオムツ交換。まるでしたこともないばかりか、見たことすらない状態。一応研修はあったものの、実際に行うのは全然感覚が違いました。しかも布オムツのため、交換している時に崩れてしまい、慌てふためくことも度々。ましてや、排便の場合などは焦ってシーツや衣類まで汚してしまうことも…。
それでも、優しい方が多く、「はじめてなら仕方がない。どうせ暇なんだから、俺で練習しろよ」なんて声をかけてくれたり。自分自身が利用者の方々にリハビリをしてもらっているような感覚でした。
忙しくも充実した日々を久しぶりに過ごしている嬉しさもあり、介護に就職して良かったと心から思えました。
しかし、気持ちの充実とは裏腹の問題もありました。
それは、日々の介護により身体に負担がかかり、いつ身体を壊してしまうか分からないという不安でした。
重度の障害を持つ方の施設のため、全介護状態の方が多く、ベッドから車椅子に移す動作などを基本通りの方法で行うと、腰に痛みが出てくるようになりました。すでに腰を壊してしまい、コルセットが手放せない同僚も多くいました。
基本通りに行っているのにどうしてこんなに身体を痛めてしまうのか……。やるせない気分でした。
そんな時、幼馴染でレスリングのインターハイチャンピオンだったHが自宅へ遊びに来ました。何気なく、介護で身体が壊れそうなんだと言い、実際に移乗動作を行って見せると、Hいわく、「その方法だと、俺でも身体壊すよなぁ」。
さらに、「レスリング技の応用だけど」と言って、移乗動作をしてくれました。
介護専門職でないにもかかわらずHの移乗動作は、「ふわり」と浮き上がるような自然さがあり、力まかせの強引さがまるでありませんでした。Hの体格は180cm、体重120kgなのにもかかわらず、筋力に頼らない動きだったのです。
「これは何かあるぞ!」
半ば諦めていた介護技術への可能性を感じた瞬間でした。
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