「古武術介護」を知る前に
「古武術」と「介護」、なんだそれは!?と違和感を持たれた方も多いでしょう。
また、テレビや雑誌なんかで見たことあるぞ、なんて方もいるでしょう。
「古武術介護」とは、武術研究者である甲野善紀氏の提唱する筋力に頼らない、身体に負担をかけない武術の身体運用を参考に生まれた身体介助技術として紹介されています。
介護の現場はマニュアル通りに上手く進むことはまずないと言っても言いすぎではないと思います。現場は例外だらけで、その例外にいかに対応できるかというのが、専門職だけではなく、家庭介護の現場でも求められてくると痛感しています。
そんな厳しい介護の現場において腰痛などで身体を痛める方は相当数にのぼります。ある調査では70パーセント以上の方が身体の痛みを訴えているといいます。介護する人が介護されてしまう、と自虐的に言う方がいますが、切実感が漂う言葉です。
「古武術介護」の代表的な技術に「添え立ち」(そえだち)」というものがあります。ベッドや車椅子からずり落ちてしまった方や、脚力が弱り床から立ち上がれない方を立ち上がらせる技術です(連載の中で詳しく説明する予定です)。
足を投げ出してしまって座り込んだ方の後方から胴体を抱えて、立ち上がらせるわけですが、通常ならば力任せになるところを、この技術を使えばほとんど力感もなく立ち上がらせてしまうことが可能です(もちろん、ある程度技術ができる方という限定条件がつきますが)。
受けた方は「ふわりと浮かんだよう」と語り、できた方もまるで筋力を使った実感がないと驚きを隠せない様子が見られます。もしそんな動きができたら、腰痛に悩む方には可能性を感じてもらえるのではないかと思います。ただ、これはあくまで一つの現象に過ぎず、本質は違います。
実は「古武術介護」なんて技術は私はないと思っていますし、そもそも介護技術ではないと思っています。武術の身体運用を参考に介護、日常生活における身体運用理論が正体です。
この連載では、とかく誤解や誇張された情報の中にある「古武術介護」の本質を技術だけでなく、発想や考え方も十分に交えて伝えていけたらと思います。その意味で「トリセツ(取り扱い説明書)」としてもらえたらと思います。次回からは核となる考え方を中心に述べていきたいと思います。
コメント
古武術介護の本を愛読しております。
先日、「主人がベットから落ちた」と家族からSOSの連絡が入り、急いで利用者宅に向かいました。体重78kgのかたですが、90㎏にも100㎏にも感じ、家族だけではびくともしなかのです。家族に支えてもらい、古武術介護の本にかいてあるようにやってみました。フワッと利用者さんを持ち上げることができとっても喜ばれました。
それから利用者さんとの絆が更に深まった気がします。ありがとうございました。
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