痰で母の喉がつまった!
一般に私たちが食欲をなくすのは、胃腸の具合が悪いとか、その他の内臓の病気が悪化したとか、風邪などで発熱したとか、またストレスなどによって精神的ダメージを受けたなどが主な理由と考えられる。
しかし、高齢者の場合、さらに口腔内のトラブルも食欲減退の大きな要因となることが少なくない。例えば、「歯が抜けたままで噛み合わせが悪い」「入れ歯が合わなくなった」「なかなか飲み込めず口の中の食べ物が残ってしまう」など、歯や舌、嚥下機能の低下などから起こりがちである。
母がまだ、茶の間で家族といっしょに食事が摂れるときであった。
好物のけんちんうどんを目の前に、普段なら誰よりも先に箸をつける母が、この日はなぜかためらい、痰を出そうと無理に咳き込んでいる。
様子がおかしいので、ヘルパーさんに背を支えていただき、口を開き中をのぞいてみた。
喉の奥に、濃厚な痰が絡み付いていることがわかった。
母は食事どころか、ますます苦しそうに咳き込んでいる。
私はとっさに、滅菌ガーゼを人差し指と親指に巻き、濃い煎茶を浸し、母の口の中に指を入れ、ぬるぬるした痰をつかみこみ、一気に取り出した。その量の多さに驚いた。
痰は気道から吐き出される粘りのある液体で、細菌やほこりなどの異物といっしょに、たえず口腔に送り出されている。普通なら無意識のうちに飲み込まれているが、気管支の疾患などによって気道の分泌が多くなり一定量溜まると、この異物を取り除こうと、咳によって吐き出そうとする。
ところが、高齢者になるとその力が低下し、痰を上手に出せなくなり、食欲どころか命の危険性にもなりかねない。
とっさにとった私の行動は、適切でなかったかもしれない。
危険に対する本能的な行動だったように思うが、痰を出し切ったあとの母は、みるみる食欲を取り戻した。
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