ルージュにイヤリング
私の専門は栄養学だが、介護や福祉の研修もしてきた。その経験を母の介護に役立てたいという思いがあった。たとえばそのことで思い出すのがアメリカでの研修である。
私がはじめてアメリカのUCLA(州立カルフォルニア大学ロサンゼルス校)に夏期研修に行ったのは、今から十数年前のこと。
すでにその頃からアメリカでは、福祉や介護の分野でアロマテラピーやカラーセラピーの応用が研究され、実践されていたため、私は幸運なことに長期療養者の心を癒す香りや色の使い方などを実践的に勉強することができた。
そのほか、自律神経を整えるための音楽の応用など、目新しい分野の研究が目白押しで、アメリカの進取性に驚かされたものである。
なかでも忘れられないのは、ロサンゼルス郊外の広大な敷地内に立つ老人ホームの見学であった。
私たちを出迎えてくれた施設のオーナーをはじめ、入所者たちが実に賑やかで、日本の老人ホームのイメージからは程遠かった。
施設見学中、ある一角だけがほかと明らかに雰囲気が異なっていることに気づいた私はそのことを案内者に告げると、「何が違うと思う?」と聞かれた。
私はUCLAでの社会福祉学の授業で学んだことを思い出し、「ここはローズオイルの匂いがします。それとも天国の匂いかしら?」と答えた。
すると案内者が、「あなたは鋭い感覚を持っている」と誉め、その一帯がアルツハイマー型認知症の患者さんの病棟であることを教えてくれた。
そして、このエリアは万が一落ちているものを患者さんが食べても危険がないように、ハーブ系や毒のない植物が植えられているとのこと。
さらに驚いたのは、このような病棟の清潔さ、カラフルさ。患者さんたちもそれぞれがオシャレを楽しんでいるかのような明るいファッションで、日本に見られがちな暗いイメージとは明らかに一線を画していた。
国民性の違いとはいえ、“年だから”という日本流の考え方、というよりも、私の考えを見直した見学であった。
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