記録は宝の山
子どもとは、無邪気でかつ勝手なもので、親に育てられたときの記憶があまり残っていない。
ところが、親の子育て日記をみると、親がいかに自分を大切に育ててくれたかがわかる。病気で苦しんでいたとき、進路で悩んでいたとき、いちばんあたたかい愛情を注いでくれたのは母親であった。
子どもを育てるのはたいへんでも、親は子どもから日々楽しみを得ている。「子育ては自分の生きがい、子どもさえ元気でいれば何も要らない」とは母の口癖だった。
子育てをしなかった私にとっては、母の介護が点から授かった貴重な時間と考え、「介護は楽しみながら、子育てのように」すれば、きっと介護した日々が後ですばらしい思い出になるのではないか、そしてその日々を残しておきたいと、記録を綴り始めた。
4年間で11冊、まさに宝の山である。
記録の基本は、起床時から就寝時までの実際を具体的に書くことにした。
その1日例はこんな感じだ。
【○月○日(○曜日)天気】
◆6:00 起床。排泄介助、尿(+)、便(-)、検温36.5度。清拭(顔・手・腕などを熱い蒸しタオルで拭いた後、化粧水・乳液をつけ、薄化粧をする)。
◆7:30~8:00 朝食。ごはん、味噌汁(豆腐となめこ)、巣ごもり卵、シラス干し、トマトとカブのおろし和え、果物(リンゴ)を完食。お茶200cc。会話多い。
◆9:00~10:30 車いすで庭を散歩。看護師さんたち来訪のためベッドに戻り、約1時間リハビリを行う。健康状態のチェックあり。血圧120/60、体温36.6度、脈拍70、順調とのこと。リハビリ前、排泄介助。ポータブルにて、尿(+)。リハビリ後、水分200cc補給。
◆12:00~13:00 昼食。鶏肉(つくね団子にする)と野菜、キノコが入った煮込みうどん、苺とバナナのヨーグルト和え、ほうじ茶200ccを完食。排泄介助、尿(+)。
◆15:00 おやつ。羊羹と抹茶。近くにいる妹2人が来訪。いっしょにお茶を飲みながらおしゃべり。昼寝は中止。
◆18:00 夕食。茶がゆ、まぐろと鯛の刺身盛り合わせ、おだまき蒸し、ホウレンソウの白菜巻き、麦茶200cc完食。来客もいっしょに食べる。
◆20:00 入眠前足浴。排泄介助(ポータブル)。熟睡。
◆24:00 排泄介助(オムツ)、尿(+)、便(-)。
この介護日誌は、私が留守をするときにヘルパーさんに伝えたいことを書き留めた「連絡ノート」としても役立った。また逆に、ヘルパーさんからの連絡事項が記入されることもある。主治医も身体状態や病気の早期判断に活用してくれた。
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