護送車みたい!?
まだ母が比較的元気だった頃、デイサービス(通所介護)のお誘いを受けた。
そこである日、母と弟と私の3人で、どんなところか1日見学体験に行った。
郊外の田んぼのなかに突如、広くて豪華な建物が見えてきた。初めて見るわが町のデイサービスセンターである。
母は、「まるでおとぎの国の建物みたいね。どんな人がいるのかしら、と、早くも興味津々。
顔見知りの介護士さんたちに迎えられ、施設のなかを見学した。
当時、デイサービスといえば送迎専用のバスで施設に通い、集団レクリエーションで一日過ごし、昼食や入浴サービスが受けられるところと思っていたが、その辺りの設備は申し分なかった。
ところが、母はといえば。
見学中、いろいろな人から話しかけられたり、集団でさまざまなレクリエーションメニューを行う様子に驚いたようだ。いまでは利用者が思い思いに好きな時間を過ごすことがあたりまえになったが、当時はまだまだこうしたイメージが強かったように記憶する。
見学が終わったとき、「フジさん、いかがでした? 来週からでもいらっしゃいませんか」とのお誘いに、母は弟と私を見つめ、「この人たちがいなくなって、私が一人残ったときにお世話になります。そのときはどうぞよろしくネ」と答えた。
瞬間、みんなで思わず吹き出した。そして、それ以上勧めるのはやめにした。
午後3時頃、施設の玄関前に大きな送迎用バスが来て、帰路につく通所者を手際よくお乗せしている様子を母が見ていた。母がポツリ、「護送車みたい…」。
利用されている方には申し訳ない、少々ひどい感想ではあるが、こういうふうに感じるおとしよりもいたのは事実だ。いまの自由な形態のデイサービスをみるにつけ、そうした本人からの素朴な感想から、変化は起きてくると実感している。
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