新人ヘルパーさん、いらっしゃい
治療や介護においてよく耳にする「QOL」(クオリティ・オブ・ライフ)という言葉。
単に、「病気の治療」とか「リハビリ」という目的の達成だけでなく、食事、排泄、着替えなどのほかにも不安、ストレス、ふさぎ込みなどの精神的状態などもよい状態にしたい。つまり、生活全体の質の向上が大切だという考え方だ。
在宅介護でも例外ではない。
「病は気から」というように、母の場合も気分がよくなると食欲が高まり、便通がよくなったりすることがたびたびあった。そこで、「おしゃれ」で「話し好き」な母に合った環境づくりを考えた。
まず、孤独感を感じさせない。これは母のみならず、一般高齢者にも通じることでもある。そのためには、家をオープンにして、みんなが気持ちよく出入りできる雰囲気をつくることが大切。
在宅介護を続けていると、どうしても1日に出入りできる顔ぶれが単調になりがちである。そのため、社交的な母については、できるだけ多くの人とお話ができるよう、特にヘルパーさんには朝・昼・3時・夕と、1日に4人の方が交代交代で来ていただくようお願いした。介護保険外のサービスを組み合わせての作戦である。
そんなわけで、1日にヘルパーさん、家人、ご近所さまなど10人前後の方とお話ができ、母はたいそう喜んだ。
家をオープンにして気持ちよく出入りできる雰囲気づくりは、ヘルパーさんにも好評だった。
開放的なせいか、介護者の私がいても互いに気兼ねすることなく、自然体で接することができたようである。また、母がいちばん嫌がっていたオムツ交換でも多少雰囲気が和らぎ、笑い声が聞こえることも少なくなかった。
介護する人・される人がそれぞれ気兼ねなく、「以心伝心」という域に達するのは、なかなか難しい。
わが家では、母は社交的なこともあって、けっこう思いを表現するタイプだった。
これは介護する人にとってもよかったようである。ヘルパーさんからは、フジさん(母のことである)から優しく「ああして」「こうして」と言われると、自分のすることをスムーズに誘導されているようで、ホッとすると言われるようになった。
母のほうも心得たもので、「ああして」「こうして」と甘えて、雰囲気を和らげていたようだ。
新人ヘルパーさんの場合、まだマニュアルどおりに一生懸命で、なかなか自分から話しかけたり笑顔になれず、ゆとりがない。ベテランになると、手の抜き方はうまいが、話し方や雰囲気づくりも同じくらいうまい。口には出さないが、介護される方もそれがわかっている。
母は、よくこうつぶやいていた。
「新人さんって、やっぱり新鮮でいいわねぇ」
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