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野田明宏の「俺流オトコの介護」

性分とレスパイト

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 8月5、6、7、8日の3泊4日。母のショートステイ期間のことについて触れたい。
 5日。我が家から少し距離のあるグループホームで写真撮影の予定があったので、ショートからのお迎えを20分早めてもらい母は午前10時前にショートへと向かった。
 午後、無事に撮影も終わり帰宅。暗く誰もいない部屋。灯りを点ける瞬時、空しさが込み上げる。シャワーを浴びて、独りチビチビとカツオのタタキなどを摘みながら晩酌をする。生活に追われているとあまり感じない“寂しい”が湧き上がってくる。なんとも言えない哀しさ。
 負けるな ファイッ!!
 自分に言い聞かせながら晩酌していると、ついつい量ばかりが増えていく。
 実は、翌日の6日、ある勉強会に参加することにしていたのだけれど、目玉である先生が急に体調不良で参加できないことを知り、参加を取り止める。結局、6日と7日は丸々予定なしで空いてしまった。
 まあいいか。久々に何もしないで読書三昧でもしようか?
 しかし、母の顔が脳裏を過ぎる。岡山に居て、特別な用があるわけでもないのに母を無視しているように考えてしまう。バスを乗り継いで1時間でショート先に着くのに。
 知人や友人。特に顕著なのは介護を職とする人たちで、
 レスパイト
 という言葉を声にしてオレに向ける。
 簡単に言えば 休養。
 もちろん、肉体的にも精神的にもだ。
 考えた。考えている間に一眠りしてしまった。暑いので汗ビッショリ。また母を想う。
 発汗していないだろうか? 職員は、母の背中の汗に気づかってくれているだろうか?
 考えても仕方ない。これは、性格というより、性分と表現した方が妥当な気がする。どうにもならない。母が気になって。
 6日。午前11時前にショート先に到着。大部屋なのだけれど、各自、カーテンで仕切られているので個室感覚でもある。
 しかし、ヒンヤリする。暑い外から来たばかりだからか? 
 温度計を見る。母と隣人を仕切る壁に掛けられている温度計は25度ほどを指している。母はタオルケット1枚を胸下まで。これは寒いはず。我が家では、室温28度で同じようにする。25度まで室温を落としたことはなく、26度ならタオルケット1枚を首まで覆い、もう1枚のタオルケットをお腹まで掛ける。
 なので、我が家と同じようにタオルケットを掛け直した。そんなことをしていると、隣人と隣人の友人らしき女性2人の声が聞こえてくる。失礼極まりないのだけれど、認知症ではないらしい。
 「寒いなあ! ここまで冷房する必要もないよなあ? もう1枚重ね着しよう。職員は動くけど、私らは横になってるだけじゃからなあ」
 このまま、私は帰宅するわけにはいかなかった。職員1名に声を掛け、なぜ、私がタオルケット2枚にしているかを告げた。
 「分かりました。充分に気をつけます」
 安心して部屋から出ようとすると、入り口の温度計は28度を指していた。母の頭上に扇風機があり、これがガンガンと稼働している。更には、母の足先上にエアコン。25度と28度。温度差が隔たっても頷ける。
 帰宅して、その夜に考え不安になったこと。
 母は、凍えてないだろうか?
 翌日の7日。ほぼ同じ時間にショートへ。タオルケットは1枚が胸下あたりまで。アレッ? でも、壁にある温度計は28度を幾分下回っているだけ。この温度なら、このタオルケットの掛け方がベスト。そこへ、介護職員さんが現れる。
 「今日、両サイドのお隣さんはいないんです。だから、お隣のエアコンも動いてないから寒くはないんですよ」
 そういうことなんだ。ここまでの気配りに感謝。オレの心配が空回りしている。職員さんたちに失礼でもあった。
 母は入浴後らしく、髪からシャンプーの良い香りが漂っていた。
 結局、ショートに出たにもかかわらず、オレは母と毎日、顔を付きあわせていたことになる。だけど、こうせざるをえない“性分”なのだ。そして、母の顔を見て安心するオレがいる。夜、安眠できれば疲れはかなり抜けるのだから。
 オレ流。肉体的にはキツイけれど、精神衛生上スコブル宜しい。在宅介護を長期継続するということには、自分自身を正しく把握しないといけない。
 レスパイト。この言葉の意味も、真摯に考えるなら、百人百様のような意味合いがあるような気がしてならない。
 各介護者にとって、なにが最善の休養か? を。

*本連載は、次回で最終回になります。


コメント


こんにちは
介護者にとって、なにが最善の休養か・・・
そうですよね
レスパイトの形も介護者の性分によって
それぞれあるんですね~


投稿者: my男 | 2011年08月26日 05:53

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
野田明宏
(のだ あきひろ)
フリーライター。1956年生まれ。約50カ国をバックパックを背負って旅する。その後、グアテマラを中心に中央アメリカに約2年間滞在。内戦下のエルサルバドルでは、政府軍のパトロールにも同行取材等etc。2002年、母親の介護をきっかけに、老人介護を中心に執筆活動を開始。2010年現在、83歳になる母と二人暮らしで在宅介護を続ける。主な著書は『アルツハイマーの母をよろしく』『アルツハイマー在宅介護最前線』(以上、ミネルヴァ書房)など多数。『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)にて、「僕らはみんな生きている」連載中。
http://www.noda-akihiro.net/
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