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野田明宏の「俺流オトコの介護」

思い出の6畳間

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 昨年12月25日。引っ越し作業のトドメである汲み取り(屎尿処理)を終え、お別れも兼ねて母とオレの戦場であった6畳間に足を向けた。
 改めて、隅から隅まで点検する必要もないほどに、そこはガタガタであり悲惨でもあった。とはいえ、オレたち二人の思い出が凝縮している場であることに変わりはない。
 実は、かなり以前から大家さんから懇願されていた。
 「野田さん、頼むからここから引っ越して欲しい。地震の大きいのでも来たら、お母さんと野田さん、屋根の下敷きになってしまうかもしれん。そんなことを想像しておったら夜も眠れんことがあるんじゃ」
 大家さんの指摘と心配は、住んでるオレには身に染みて理解も納得もできた。母がアルツハイマーと宣告されて以降、岡山に台風直撃か? という予報の度、母を連れて近くのホテルに自主避難した。母を抱えて避難所生活など想像しただけでもストレス極まった。
 もっとも、未だに倒壊もせず健在であるのだから、自主避難することもなかったのかもしれない。一泊に1万円も払って。
 しかし、ホテルから帰宅したら窓枠が落ちていたり、側壁が剥がれていたこともあった。雨どいが剥がれご近所に飛散したときは、頭を下げまくりであった。
 地震。オレの推測では、震度4強あたりで揺れたら倒壊はしないまでも、家そのものが傾斜する予感もしていた。傾斜そのものは今もしている。床にゴルフボールを置けば、勢いよく転がるのだから。
 一つひとつを書き記せば、切りがないほどに家は傷んでいた。
 だけど、母とオレの思い出の場であり、離れていた母とオレの心の距離をチャラにしてくれた6畳間である。
 見れば見るほどに痛々しい。それ故、よく踏ん張ってくれたと心から感謝!
 辛きこと多かった、オレたち母子の全てを見届けてもくれてるのだから。

201101252.png
 
 部屋を見渡せば、壁に一枚の紙が。ゴミ処理業者も悩んだ末、残していったのかもしれない。
 ☆できないことを押しつけない。
 ☆和ちゃんを抱きしめる
         fumbar
 fumbarは、“踏ん張る”が由来。
 母の最も混乱期、オレがオレ自身を戒めるために貼ったモノだ。オレにとっても一番辛い頃だった。未だ文字にもできないほどに悲惨を極め、周囲からは母を施設へ託しなさい、との大合唱も聞こえてきていた。
 誰が見ても、ちょっと勘弁して欲しい6畳間だろう。
 でもなあ! 今振り返れば、ここはオレたち母子にとって楽園だったような気もするから不思議だ。
 愛おしい。
 だから、シッカリとカメラに納めた。
 

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コメント


元気があれば どこでも住める
ダーー!

しかし、引っ越しで正解ですね。
これはすごい


投稿者: 猪林 | 2011年01月26日 12:36

猪林 さま

どうも はじめまして。
お名前のところ、
猪木さま
と最初に打ち込んでしまいました。

元気もないし、
以前のところはもうダメですね。
継続していれば耐えられるのでしょうが、
湯が出る水道を経験してしまうとですね

今冬は手荒れいたしません。
隙間風も入ってきません。
ありがたいことです。


投稿者: 野田明宏 | 2011年01月27日 16:03

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
野田明宏
(のだ あきひろ)
フリーライター。1956年生まれ。約50カ国をバックパックを背負って旅する。その後、グアテマラを中心に中央アメリカに約2年間滞在。内戦下のエルサルバドルでは、政府軍のパトロールにも同行取材等etc。2002年、母親の介護をきっかけに、老人介護を中心に執筆活動を開始。2010年現在、83歳になる母と二人暮らしで在宅介護を続ける。主な著書は『アルツハイマーの母をよろしく』『アルツハイマー在宅介護最前線』(以上、ミネルヴァ書房)など多数。『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)にて、「僕らはみんな生きている」連載中。
http://www.noda-akihiro.net/
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