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野田明宏の「俺流オトコの介護」

秋の空

20101015.png

 稲穂が頭を垂れはじめ、ススキが顔をだし、青く高い空は突き抜けるよう。母が歩ける頃、正に秋ど真ん中の出来事だった。
 オレと母はいつものようにcoopに買い物へ出た。もちろん歩いてだ。写真の道を二人で一緒に。
 買い物を済ませ、帰路へ。今は閉店してしまったのだが、coopを出て3分も歩くとコンビニがあった。普段は全く無視して通り過ぎてしまう。ただ、どういう事情で立ち寄ったかは記憶にないのだが、コンビニへ入った。
 コンビニはコンビニで、欲しくなるモノもある。何品か購入してレジ待ちをした。オレの後方に母。支払いの順番が来た。オレはレジ前に立った。するとレジ係のお姉さんが、オレに問うた。彼女の視線はオレのかなり後方。周囲では薄ら笑いが聞こえる。
 「お客さまとご一緒の方ですか?」
 オレはレジ係の視線の方を伺う。すると、母がそこにいた。裸足だった。棚にある品を手にとって見ていた。
 オレは、母が直ぐ後ろにいるものだろうと思い込んでいた。オレの足先には、母の靴と靴下があった。
 オレは猛烈に恥ずかしくなった。レジで支払いを済ませ、母に靴を履かせることもしないで、母の手を取ってそのまま逃げるようにコンビニから飛び出た。
 靴下を履かせ、靴も履いた。コンビニから2分もしないうちにこの道に出る。空を見上げた。この写真、そのままだった。見上げてる間に、なんだか悔しくなり目頭が熱くなった。
 隣を歩いているいる母を見た。笑っていた。ご機嫌の様子だ。
 その母を見て、なんだか余計に悔しさがこみ上げてきた。目頭は熱いだけを超え、涙が溢れてきた。上を向いた。
 写真のままであろう空が、涙で曇った。
 さて、写真は10月7日に撮った。今も、母をデイサービスへ送り出してからcoopへ向かう。往復路、この道を通る。空を見上げたら、あの日の悔しさを思い出していた。
 そして、このことを書こう! 帰宅し、カメラを下げて再び自転車に乗った。風を切る。
 その風は、秋の香りだった。切なさをチョッピリ漂わせた。

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コメント


秋ですねー
先日、野田さんの講演を聞いた一人です。
写真 素敵なアングル。
こんな空になら、涙落としても良いかなあ?
不謹慎ですが、そんな風に感じてコメントしてしまいました。


投稿者: 岡山市民 | 2010年10月15日 12:34

岡山市民さま

わざわざのコメント 
ありがとうございました。
少し、青を強調しましたが、
構図は正解でした。
ずーーーと観てると、
空に吸い込まれるような錯覚に陥るようで?
藤川幸之助さんモドキになれそうです。
感性、揺さぶられますから。
これからも、ヨロシク です。


投稿者: 野田明宏 | 2010年10月15日 16:43

 私にも、似たような経験があります。
悔しいですよね。自分がした事ではないのに他人に笑われた。でもそうなったのは何の落ち度も無い母の病のせい・・・
 どこに、悔しさをぶつけたらいいのか。
それが自然にくやし涙にかわっていく。
 私も、今でもトラウマのように時々よみがえります。
秋が、おとこまえさんの心をも感傷的にさせていく・・・
でも、(あの頃はまだそれでも歩けてたな~今のむなしさと、あの頃の悔しさだと、どっちがマシなんだ)って私は時々想います。
今となっては、それも我々にとって一つの修行だったのかと・・・


投稿者: セブン(たびたび すみません) | 2010年10月16日 12:41

セブンさま

毎度 ありがとうございます。
総量規制はありませんので、
ドンドン
コメントお願いします。
でも、修行ですか?
自分だけでそっと、
怒り、悔しさを、私は消化してきましたね。
キツイなあ!
でも、ただただ踏ん張りつづけました。
そうであったような気がします。


投稿者: 野田明宏 | 2010年10月16日 17:50

何かジーンとするお話しです。
母親の笑顔・・・
どこにもぶつけることのできない気持ち
青い青い空・・・
思わずコメントしてしまいました。


投稿者: my男 | 2010年10月17日 16:57

my男さま

深い青が、
なんとも心を動揺させますね。
まあ、
生きてるって感じ
なんでしょうがね。
また ヨロシク です。


投稿者: 野田明宏 | 2010年10月18日 09:40

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
野田明宏
(のだ あきひろ)
フリーライター。1956年生まれ。約50カ国をバックパックを背負って旅する。その後、グアテマラを中心に中央アメリカに約2年間滞在。内戦下のエルサルバドルでは、政府軍のパトロールにも同行取材等etc。2002年、母親の介護をきっかけに、老人介護を中心に執筆活動を開始。2010年現在、83歳になる母と二人暮らしで在宅介護を続ける。主な著書は『アルツハイマーの母をよろしく』『アルツハイマー在宅介護最前線』(以上、ミネルヴァ書房)など多数。『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)にて、「僕らはみんな生きている」連載中。
http://www.noda-akihiro.net/
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