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野田明宏の「俺流オトコの介護」

KOBUの会

 アルツハイマーの母と二人三脚の八年間、とオレのタイトル画で紹介されているけれど、次号が掲載される七月三十日。その介護も九年目の初日となる。なのだが...
 実は、ある会合。医療・介護を中心に取材・編集する人。介護施設で働く人・経営者。少数ながらオレのような介護者等が集まって意見交換する場がある。
 ちょっと違うかな? 定期の会合場所は東京・新宿の居酒屋なのだから。真摯に意見交換すると表現するよりは、介護全般に関わる人たちの交流の場。オレのように岡山という地方で在宅介護に明け暮れている立場には、人脈を拡げるにはもってこいの場でもある。
 核になるメンバーは存在するものの、毎回、初顔の人も少なくない。基本的には二ヶ月に一度の開催。ここで意気投合すれば、各人が随時に交流の場を設ければ良い。互いのメリットはスコブル大きいはず。
 もっとも、オレは自費で岡山から駆けつけるわけだから簡単ではない。母のショートステイとの兼ね合いもあるし。だから、まだ二回しか参加していない。
 前置きが長くなった。まあ、居酒屋でアルコールを入れながらだから、段々に主観一辺倒でエキサイトし始める人もいる。オレはOKだと思う。仕事を済ませ、ヤレヤレ感で皆、この場にたどり着いて来るのだから。緊張感はポイだ。
 で、一人の介護施設で働く男性から、ストレートな一声がオレに向かって届いた。
 「野田さん、趣味もってる?」
 オレは少々考えなければならなかった。浮かんでこない。
 「今ですかあ? 無いですねえ」
 あれしたい、これもしたい。という欲求や興味はるのだけれど実践できないでいる。ある意味、“在宅介護者の宿命”でもある。大袈裟かな? しかし、外れでもないはず。
 「ダメだよそりゃあ! お母さんの介護。介護の原稿を書く。飲むメンバーも介護関係者ばかり。介護 介護 介護 じゃーん。介護とは全く無縁の趣味をもたないと」
 そして、自身が活動してる趣味について語り始めた。満願の笑顔。話すその表情から楽しさと充実感がヒシヒシと伝わってくる。
 オレは少々の嫉妬。心に命中した。
 確かに、当たりだから余計に動揺もする。今のオレは、全ての道は介護に通ず、の環境設定にONしてるかのようでもあるから。
 だけど、だ。オレは書く人である。今、これを読んでくれている方々と出会えたのも、介護 介護 介護 があったから。
 「公私、介護ばかりでもいいじゃん」
 彼に、次に会ったときはこれでいこうと決めている。
 ところで、けあサポ、この連載担当のT女史ともこの会で一緒したのが初対面。誤解があると困るので付け加えるが、この会の勢いで連載が開始となったわけではない。

kobu.png
 写真で一緒に写っているオトコは上下なしのオレの兄弟分。彼からT女史へオレを紹介するメールが送られ、その後、オレとT女史がメール交換したり電話でのやりとりからこの連載が決まったのであります。
 この会。“KOBUの会”という。
 名前の由来は写真のネコ。のんべんだらりのネコは兄弟分の家でコブと呼ばれ、そこからKOBUと横文字になった。
見ているだけでホッ! とする。
 オレもホッ! とするためだけに、岡山から費用対効果を無視して参加してるのかもしれない。
kobu2.png

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コメント


私は薬剤師です。

とは言っても現場にはあまり立っていないので
薬・立たず な薬剤師です。

介護、介護、介護、これが野田さんの今の納得人生なんですねぇ。

自分の生き方にどう自分が納得するか、
その大切さが50を前に私も
少しだけわかってきたように思います。

じゃ私の納得人生とは?

ん~???
まだ見つかっていない?気付いていない?
結局、わかっていないんですねぇ~。

もうしばらく自分の宿題です。

ありがとうございます。


投稿者: うぱん | 2010年07月23日 19:33

うぱんさま

はじめまして。
そして、コメントありがとうございます。
まあ正直、介護そのものを恨んだ期間も長くありました。
在宅介護。閉塞感の中、介護地獄そのままを独りで闘ってましたから。
もっとも、介護地獄にしてしまったのは私自身。
不器用なのです。
でも、長くしていると、
あいつ頑張ってんじゃん
という具合に、写真でアホ面丸だしのオトコなどは親身に応援してくれるようになりました。
燻りから解放してくれたのも彼ですね。まあ、酒を一緒しないとふて腐れる一面はありますが。
とにかく、やっと介護と素直に、そして優しく向き合える私になれました。
優しい自分がいることを知る。認知できた。
なんか、やっと人間として歩み始めることができた、という実感です。
今後もヨロシクお願いします。


投稿者: 野田明宏 | 2010年07月24日 17:37

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
野田明宏
(のだ あきひろ)
フリーライター。1956年生まれ。約50カ国をバックパックを背負って旅する。その後、グアテマラを中心に中央アメリカに約2年間滞在。内戦下のエルサルバドルでは、政府軍のパトロールにも同行取材等etc。2002年、母親の介護をきっかけに、老人介護を中心に執筆活動を開始。2010年現在、83歳になる母と二人暮らしで在宅介護を続ける。主な著書は『アルツハイマーの母をよろしく』『アルツハイマー在宅介護最前線』(以上、ミネルヴァ書房)など多数。『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)にて、「僕らはみんな生きている」連載中。
http://www.noda-akihiro.net/
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