ページの先頭です。

ホーム >> 家庭介護サポーターズ >> 野田明宏の「俺流オトコの介護」
野田明宏の「俺流オトコの介護」

オトコの世間体

noda4.jpg

 母のベッドにはいつもトナカイクンがいる。敬称で呼べばトナカイクン君となる。トナカイクンが母のそばに来てから一年半少しが経過した。一昨年のクリスマスイブ少し前にプレゼントされてやってきた。
 もっとも、母が癒されるというより、オレがスコブル癒されるのだ。時々、抱っこしてハグハグしてやる。五十四歳にもなって……。
 とにかく、トナカイクンは母のベッドに居なくてはいけないペットになった。母のためではなくオレのために。
 さて、ここまで書いてきて想像するのだが、
 「この野田明宏という人物は、少し変? なのではないか。前回も、“お母さんの性器に感謝のチュッをした”などと記してあったし」
 このまま書かせていて大丈夫? などと。
 どうだろう? オレ自身は全く変だとは思ってない。ただ、世間からはいろいろ声が聞こえてくる。それは、我が家の家計の大部分が母の年金で賄われているからだ。
 「お母さんの年金をあてにして」
 などは可愛いものだ。
 「シッカリ働いて納税しろ」
 ここまでくると以前はかなり動揺もした。
 しかし、ザックバランな話、認知症の母を在宅介護しながらフルタイムの仕事ができるだろうか?
 母の場合はアルツハイマー病だけれど、アルツハイマー病の混乱期は昼夜逆転に加えトイレ誘導も必要となる。トイレ誘導というのは、トイレに連れて行ったからといってオシッコを出してくれるわけではない。
 そろそろ出る頃かな? と介護者が想像して誘導するわけだから、トイレで外れて布団に戻ってからジャーなんていうことは日常茶飯事だ。布団を替え、翌日干さなければならない。母の着替えもさせないといけない。
 着替えをさせる。と記せばそれまでだが、これが強い抵抗を受け簡単ではないのだ。こんなことが、もし一晩で二度もあれば、心に潜む鬼畜がほくそ笑む。
 心に潜む鬼畜については後々、詳細に記す。思い出したくもないヤツのことだけれど。簡単に言えば、オレは虐待者なのだ。この鬼畜、今もオレの心の奥に潜んでいることは間違いない。
 とはいえ、オトコは世間体を気にする。働いていない、ということに。在宅介護を継続しつつも大きなプレッシャーを抱えてしまう。ましてや働き盛りとなれば尚更だ。
 オレの場合、書く、という仕事だからある時点では三つの連載を同時進行していたことがある。取材には出られないけれど、母とオレのことを書いてくれれば良い、という依頼ばかりだったから。
 なので、無職であったことはないのだけれど、母の年金に依存している事実は今も変わりない。
 そして今。何を言われようが動じない。母が愛おしくて仕方ないから。
 もっとも、ここまでくるには、哀しみと切なさにイッパイ出会ったけれど。

続きを読む


コメント


「。母が愛おしくて仕方ないから。・・・ここまでくるには、哀しみと切なさにイッパイ出会ったけれど」・・・・・・・
そおーなんですねぇ。野田さんが介護を何年も続けてきたからこそ出てくる言葉なんですよね~。
野田さんの優しさがしみじみ伝わってきます。
ホントに優しいこころをもつ人は、自分の心の奥に鬼畜がいることをはっきり知っているんですよね~。この文章からじわーっとつたわります。


投稿者: まつ | 2010年06月27日 17:22

そのままの感じでこれからもお願いします♪
自分が実際に在宅介護をした経験がないので何も言えませんが、きれい事ではないと想います。

OTOKOMAEさんと同じ境遇で、でも表に声を出せない人もいると思います。そんな方にもOTOKOMAEさんの記事は力になると思います。

これからも頑張ってください。


投稿者: MaCO村長 | 2010年06月28日 20:25

まつさま

いつもコメントありがとうございます。
これからは、哀しさ 切なさについても記していこうと考えてます。
とはいえ、思い出しながら書かないといけない。
これもチョッピリ辛いところです。

MaCO村長さま

村長さんにも、いつもお世話になります。
村長さんの声、やはり一自治体の頭ですねえ。
ファイトが湧いてまいります。
これからもヨロシクお願いします。


投稿者: 野田明宏 | 2010年06月29日 12:48

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

コメントを投稿する




ページトップへ
プロフィール
野田明宏
(のだ あきひろ)
フリーライター。1956年生まれ。約50カ国をバックパックを背負って旅する。その後、グアテマラを中心に中央アメリカに約2年間滞在。内戦下のエルサルバドルでは、政府軍のパトロールにも同行取材等etc。2002年、母親の介護をきっかけに、老人介護を中心に執筆活動を開始。2010年現在、83歳になる母と二人暮らしで在宅介護を続ける。主な著書は『アルツハイマーの母をよろしく』『アルツハイマー在宅介護最前線』(以上、ミネルヴァ書房)など多数。『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)にて、「僕らはみんな生きている」連載中。
http://www.noda-akihiro.net/
メニュー
バックナンバー
その他のブログ

文字の拡大
災害情報
おすすめコンテンツ
福祉資格受験サポーターズ 3福祉士・ケアマネジャー 受験対策講座・今日の一問一答 実施中
福祉専門職サポーターズ 和田行男の「婆さんとともに」
家庭介護サポーターズ 野田明宏の「俺流オトコの介護」
アクティブシニアサポーターズ 立川談慶の「談論慶発」
アクティブシニアサポーターズ 金哲彦の「50代からのジョギング入門」
誰でもできるらくらく相続シミュレーション
e-books