母の現況
平成十四年七月二十九日。母がアルツハイマー病の中期後半と確定診断された。中期後半というのはいかがなものか? 医師の診断に疑問視するも、長谷川式では三十点満点で七点だったから致し方ないようにも思えた。
まあ、始まりから今日までの長い戦は随時ここに記していく。なぜ、もっと早くに母を診察に連れていかなかったか? 等々も。なので、今回は母の現況のみに触れたい。
一般的でステレオタイプな表現をすれば、“要介護五で認知症の寝たきり”。読者方々も簡単にイメージできると思う。もっとも、これはあくまでステレオタイプなので詳細が必要となる。病状は百人百様だとオレは確信してるから。
目は、ほぼ失明に近いか失明していると眼科医から説明を受けた。黒目が見あたらない。鼻は大丈夫。耳も、そばでワッ! と大声を上げると身体がビクッとするから聞こえている。
歯。上は全くなく、下はかなり残存している。下の歯で上唇を噛むものだから上唇は常に腫れている。
さて、写真でもお分かりになると思うが、母の両腕は拘縮している。最初は右だけだったのだが、段々に左も始まり、今は両腕ガチガチ状態。手の平は常に握った状態。これも拘縮なのだろうけれど、一生懸命に握るものだからカットしてある爪なのに手の平を刺してしまうことがある。
だから、小さなタオルとかガーゼを巻いて棒状にし握らせている。夏は毎日この棒状を替えないと水虫になる。
ただ、夏場は着せ替えが楽。冬場は何枚も着せるから、着せるオレが汗まみれになる。脱がすときも同様だ。拘縮している腕に衣服の袖を通す・拘縮している腕から衣服の袖を外す。とても大変なのですあります。
失語しているので言葉でのコミュニケーションは無理。コミュニケーションは、オレが母にキスしてやることかな? 顔中アチコチ。
一度だけ、「嗚呼! オレはここから生まれてきたんだ」と、母の陰部洗浄後に感謝を込めて性器にもチュッ。
食事は胃から。胃ろうですね。経管栄養。エンシュア三缶。一日七百五十キロカロリーでも栄養満点。お腹の周囲に脂肪が。もっとも、母が通うデイサービスでは、通う日には口からヨーグルトを飲ませてくれる。お通じが良くなるのだ。オレは恐くて、ここ一年は実践してないのだけれど。そして、週一回のペースで浣腸して出してもらう。
季節の変わり目に顕著なのだけれど、猛烈な噎せと咳き込みがある。チアノーゼがハッキリと認知できるほどのときは、今にも逝ってしまうのでは? と不安に脅えながら母の背を摩る。
吸引器はもちろん購入しているが、管を噛むのだ。鼻からの方がと指導されチャレンジするも、不器用なオレでは無理。吸引どころか鼻血を出させてしまった。
認知症在宅介護。混乱期を乗り越えても新たな壁が待ち受けている。
コメント
興味深く読ませていただきました。
一番上の写真、野田さんいい顔をされていますね。
そして赤いTシャツを着たお母様の顔も腕の皮膚もピカピカで愛情あふれる介護をされているのをひしひしと感じました。
「介護」というと何だか型にはまった感じですが
そんな狭いことではなく、本当に湧き出てくる愛情の中で今の関わりがあるように感じます。
しかし、日々の生活はなかなかきれい事では済まされないことも多々あったことと思います。次回も楽しみにしております。
ケアさやさま
コメント ありがとうございます。
そうですか 私 やはり いい顔してますか?
周囲からは オトコマエ などとからかわれてますが、
まんざらでもないのかも?
赤のTシャツですが、ミッキーちゃん。
かなりデカイんです。これだと、拘縮した腕も肩からスコーンと入ってしまうような。
愛情かどうかは? ただ、今の母が大好きであることは間違いありません。
いろいろありました。
でも、この8年間、母を無視したことだけは一度もありません。
これからも引き続きヨロシクお願いします。
ほんと、お母さんは愛情たっぷり受けているんだろうなぁ~っと、写真から想像されます。
と同時に、OTOKOMAEさんもお母さんから沢山の愛情を今でも受けているんだなぁ~と。
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