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野田明宏の「俺流オトコの介護」

オレたちの戦場から

 今日は六月三日。現在時は午後八時二十一分。オレがパソコンに向かっている三畳間のそば、横二メートル先で母はベッド上にいる。目は閉じているが眠ってはいないと思う。
 

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そして、この二メートルの間隔にオレの万年床が敷かれてある。ベッドと万年床で六畳間にゆとりはない。文字通りに万年床。来客がきても、座布団は出さず敷布団の上に座ってもらう。
 月に一度のケアマネジャーの来訪日。三十代の女性だが、最初はためらった。
 「野田さん、お布団の上には座れません」
 それが今、
 「なんだか、このお布団の上に座るとスゴク落ち着くんですよ」
 しかし、ここは戦場。アルツハイマーを患った母との八年間がこの六畳に凝縮されている。
 笑い 泣き 怒り、介護地獄も彷徨った。母の尋常ではない行動に発狂するのでは? と六畳と三畳の境にある柱に頭突きを何度もかました。実際、柱に頭突きを目一杯入れてしまっていたのだから、オレは少し狂っていたのかもしれない。その翌日はいつも、とんでもない頭痛に悩まされること、これも尋常ではなかった。
 ところで、このコーナー担当のT女史から、正式に連載が決まったと連絡があった先月中旬、
 「ヨッシャ! オレ流でやらせてもらおうじゃないの」
 モチベーションはグーーンとアップ。
 というのも、アルツハイマーの母を八年間、一人っ子の中年独身オトコが在宅介護してきて分かったこと。
 介護者は燻ってはいけない。
 燻ってはいけない?
 在宅介護というのは、どうしても時間に縛られてしまう。母には、アルツハイマーと診断された翌週くらいからデイサービスへ通い始めてもらったのだけれど、介護者が自由な時間というのは午前十時から午後四時くらいまでのはず。
 認知症も混乱期になれば昼夜逆転。その自由時間に眠ることになる。結果、家に籠もる。閉塞感ばかりがのしかかってくる。
 これではいけない。社会と接点を持たなければ。
 と、気づくまでに長い時間が必要だった。
 オッと! 集中しすぎて母の尿取りパッド交換時である午後九時を過ぎてしまった。替えてやらないと。
 オレは母を、和ちゃんと(和子)呼ぶ。
 「和ちゃん、パッド交換するぞ。いっぱいオシッコ出したか?」

ore100604.jpg
母 和ちゃん(和子)
 
ps
 これから一年間、ここでお世話になることになりました。認知症介護を素直に書かせてもらいますので赤裸々にならざるをえません。
 当然、お叱りもいただくこともあるでしょう。ただ、苦しかった過去。寝たきりの母が愛おしくて仕方ない今。私自身の将来への展望と不安。
 格好つけないで、ありのままを記していきますのでヨロシクお願いいたします。


コメント


おかあさんの表情いいですね~♪
安心感を感じられているのでしょうね
進行したアルツハイマーとは思えないですね。
頑張ってくださいね。


投稿者: my男 | 2010年06月04日 16:18

いよいよ始まりましたね。楽しみにしていました。ときどき書き込みさせていただきますね(^^)


投稿者: miyata | 2010年06月04日 21:53

48歳にして、ヘルパー2級をとり、7月から特養にて修行をはじめる男です。野田さん!本気で読まさせていただきますよ!勉強させて下さい!!
野田さんの今までのご経験を是非とも参考にさせて下さい。ありのままの記をよろしくお願いいたします。


投稿者: エルくんパパ | 2010年06月04日 23:43

my男さま
コメントありがとうございます。
そうですね。このときの母の表情はとても穏やかなモノでした。
息子の私でさえ、可愛く感じてしまします。
明確な記憶はないのですが、今年の1月頃に撮った写真だと思います。
母がアルツハイマーと診断された頃、8年前はフィルムで撮ってましたが、今はデジ。
母の写真を見ながらアルツハイマーとの戦を振り返ると時代の変化を感じます。
まだまだ踏ん張ります。


投稿者: 野田明宏 | 2010年06月05日 04:32

 こんにちは。小規模デイサービスを運営しているものです。以前より新聞などで野田さんのことは知っておりました。
 新しい連載スタートおめでとうございます。
 僕なんかが、言葉では簡単に言えることではありませんが、柱に頭突きをしたことなど、その時は地獄で本当にやり場が無くてつらかったのだろうと思います。
 これからもお身体に気をつけて頑張ってくださいね!応援しています。


投稿者: MaCO村長 | 2010年06月05日 17:09

miyataさま

厳しい視点からの声を頂戴しそうですが、
時々、書き込みしてやってください。
連載以前からコメントいただき、ありがとうございました。

エルくんパパさま

コメントありがとうございます。
そうですかー
私もかなり以前にヘルパー2級をとりました。
講義内容も姿勢もかなり変化してはいると思いますが、
特養の現場は凄まじいですよ。
だけど、48歳からのチャレンジ。スゴイです。
ファーイト!!
素敵な出会いがありますように!
アッと! シッカリと書きます。

MaCO村長さま

私も、MaCO村長のお噂はアチコチから耳に届いております。
私より20歳ほど若い! はず?
小規模多機能の新規立ち上げのことまで届いております。
お互い、年齢差はありますが頑張りましょう。
コメント ありがとうございました。



投稿者: 野田明宏 | 2010年06月07日 11:02

連載、とっても、とっても期待しています。
私たちの仲間だけでなく、介護家族の方たちにPRしています。
ここからまた、いろんな輪が広がっていけばいいですね。
フレー、フレー(^0^)/~



投稿者: KOBUTA | 2010年06月07日 19:14

KOBUTAさま

応援 ありがとうございます。
ご期待どおりに軌道を保てるか?
私自身が一番心配しております。
なにせ、不適切表現が多いとお叱りをいただくこと度々。
しかし、空中分解しないようシッカリ頑張りますので、
以後もPRヨロシクお願いいたします。


投稿者: 野田明宏 | 2010年06月08日 10:17

始めまして、野田さんの、ユーモラスそして愛あふれる介護話!
楽しみです。私の人生感を豊にしてくれた介護の世界!!
もっともっと、知りたくて今からわくわくしてます。
笑いあり、涙あり、怒りありですよね!
私は、その中にいつも、感動を忘れないようにと心がけてます。
沢山の感動を待ってます。
お体を大切に、頑張ってください。


投稿者: ゆかちゃん | 2010年06月09日 17:10

ゆかちゃんさま

こちらこそ、はじめまして。
ウーム チョコッとプレッシャー。
ゆかちゃんさんのご期待に応えられるか?
涙 怒り は大丈夫そうなのですが、
笑いがとれるライターになれるでしょうか?
私個人のブログは
ユーモラスというよりバカ丸出しなのですがね。
身体もガタガタ。
座骨神経痛 自律神経失調症etc
私自身のことも書くことになりますが、
今後も優しく見守ってください。
現在時は13時6分。
母である和ちゃんがデイサービスから帰宅前、
少し昼寝です。


投稿者: 野田明宏 | 2010年06月10日 13:08

本日初めてお目にかかります。私は今現在グループホームに勤務しております。 在宅介護とは程遠い現場でありますが。 以前寝たきりの要介護者を見ていた関係上写真で拝見した限りでは、とても(アルツハイマー)とは程遠い笑顔に、とても親近感をいだきました。たぶん今現在お体は不自由ではありますがとても幸せな暮らしをしていらっしゃるように見受けました。
わたしの実家には一人暮らしをしている75歳になる父がおります。健康で農作業をしておりますが、その予防的な部分での参考にしたいと思っています。
今後ともお力添えを、お願いいたします。


投稿者: 笑顔のまっこちゃん | 2010年06月18日 11:05

笑顔のまっこちゃんさま

はじめまして。
GH勤務ですか...
一人夜勤等々、大変お疲れさまです。

正直、このときの母の表情は、混乱期を乗り越え、介護地獄を私と一緒に乗り越え、胃ろう増設し、それから約3年が経過した現在では一番表情の良いときだったと思います。
今も、一般的な言い方で認知症末期としたなら、とても可愛い表情をします。
いろいろありますが、やっと鬼畜アルツハイマーと五分の勝負ができはじめました。
いろんな考えはあろうかと思いますが、
私は、母が胃ろう造設して本当に良かった と。
胃ろうについては、また書かせていただきます。
コメント ありがとうございました。


投稿者: 野田明宏 | 2010年06月18日 15:21

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
野田明宏
(のだ あきひろ)
フリーライター。1956年生まれ。約50カ国をバックパックを背負って旅する。その後、グアテマラを中心に中央アメリカに約2年間滞在。内戦下のエルサルバドルでは、政府軍のパトロールにも同行取材等etc。2002年、母親の介護をきっかけに、老人介護を中心に執筆活動を開始。2010年現在、83歳になる母と二人暮らしで在宅介護を続ける。主な著書は『アルツハイマーの母をよろしく』『アルツハイマー在宅介護最前線』(以上、ミネルヴァ書房)など多数。『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)にて、「僕らはみんな生きている」連載中。
http://www.noda-akihiro.net/
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