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村田くみの「シングル介護のホントのところ」

仕事も介護も待ったなし

 昨年の夏、仕事の打ち合わせでフリーライターの女性と待ち合わせをしていた時、「10分遅刻をする」と、直前に連絡が入り、ようやく現れると汗まみれになっていました。
 訳を聞けば、認知症のお父様をショートステイに連れて行く日で、施設から待ち合わせ場所に直行してきたので時間がかかってしまったとのこと。
 仕事の話そっちのけで、お互い親の介護の話をしたことを覚えています。

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 半年ほどたった後、またその女性と話す機会があり、お父様の様子をうかがうと、介護老人保健施設の入所が決まり、老建の入所期間が満了になったら一時的に自宅に戻る、そしてまた老建に戻る、という生活でしばらく落ち着きそうだと喜んでいました。
 フリーや自営業者は、仕事を休めばそれが収入に結びつくので、ケアマネジャーから急な呼び出しがあったとしても、仕事をキャンセルすることができないのが悩みだと語っていました。

 働き続けるための制度は少しずつ整備されてきましたが、パートやアルバイト、女性のような自営業者が仕事を続けるための制度はありません。ご両親が早くに離婚をしてしまったため、お父様の面倒を看るのは女性しかおらず、ヘルパーさんに出来る限りお世話になり、綱渡りの毎日だと語っていました。
 それでも、「施設に入れっぱなしではかわいそう」と、老建をから戻った時は次の入所までの間、自宅で一緒に住むことにしたそうです。
 「施設に入れっぱなしではかわいそう」
 との言葉に、目からウロコが落ちた思いがしました。私はこれまで自分が仕事を続けること、楽になることばかり考えて、一度もそう思ったことがなかったのです。
 少しは女性を見習わなくてはと思い、母の顔を見ると嫌味の一つでも言わないと気が済まなかったのが、少しずつ温かい言葉をかけられるようになってきました。

 次回は3月30日(火)更新予定です。お楽しみに!


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
村田くみ
(むらた くみ)
1969年東京生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社、週刊誌「サンデー毎日」所属。主に経済、環境、介護の問題に携わる。現在、母親の介護に従事しながら、介護の体験記、介護者に役立つ情報を適宜発信中。
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