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村田くみの「シングル介護のホントのところ」

退職を決意する前に

 最近よく仕事仲間から聞くのは、同世代のシングル女性が退職する話題です。
 特に介護に直面しているわけではないのに、両親とも高齢なので心配だから実家に帰る、というのです。

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 私の場合、介護を続けるために仕事を辞めるという選択肢はありませんでした。母の年金は遺族厚生年金しかなく、生活が成り立たないからです。
 ただ、自宅で介護をしていた時、デイサービスから帰って来る時には、施設の職員は家の中まで母を連れ込んではくれないので、その時間までには自宅に戻っていなければならず、保育園に預ける子どもを慌てて迎えに社を出る、働く母親の気持ちがよくわかりました。早くにショートステイの利用が決まったからよかったものの、このまま自宅での介護が続いていたら、今の仕事ではなく、定時に終わるパートに職を変えていたかもしれません。

 育児休業と同じ、介護にも休業制度があります。制度をうまく利用する方法も仕事を続ける上で欠かせないでしょう。国が定める介護休業期間は1人に対して93日まで連続して休みを取ることができます。また、介護休業制度とあわせて93日までの勤務時間を短縮する「時短」などの措置も認められています。時間外労働や深夜業を制限する制度もあります。
 こうして介護を体験してみると、休暇を取得したのは、母が入院をした期間だけで、介護を理由に休んだことはありませんでした。どちらかと言えば、「時短」や「半日休暇」のほうが利用価値があると思います。ケアマネジャーとの打ち合わせや手続きなどは、だいたい平日の午前中に行われることが多かったからです。

 意外なことは、介護で「時短」制度を導入している企業はあっても、従業員が制度を知らないで辞めてしまったり、職場内でほかの従業員に仕事のしわ寄せが行くのを遠慮して、退職を選択した人もいました。
 職場内で介護を抱える従業員が出た場合、どう仕事を調整するかといった、職場内での話し合いもまだ少ないのが現状です。介護離職を防ぐためにも、従業員が認識を持つ、職場内教育などが求められています。


 次回は3月9日(火)更新予定です。お楽しみに!


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プロフィール
村田くみ
(むらた くみ)
1969年東京生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社、週刊誌「サンデー毎日」所属。主に経済、環境、介護の問題に携わる。現在、母親の介護に従事しながら、介護の体験記、介護者に役立つ情報を適宜発信中。
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