医師以外に、認知症について相談する人や場はありますか?
【質問】
専門医への受診は3カ月に1回ですし、短い時間では日々の不安や困りごとなどは相談できません。医師以外に、そういう話を聞いてくれたり、相談できる場所はありますか?
【回答】
あります。妻の認知症の発症から4年目に「認知症の人と家族の会」に入会し、暗夜に灯を見た思いでした。6年目には介護保険の開始と同時に市の健康センターの「介護者の会」やケアマネジャーが、7年目には健康センターの訪問指導員看護師が、8年目には地元の認知症治療病棟の「家族会」が、11年目の終末期7ヶ月間は訪問看護師が心強い相談相手でした。
相談する人や場所がたくさんあると、本当に救われます。それも誰かが手を差し伸べてくれるのを待つのでなく、アンテナを高く掲げ、積極的に見つけにいくことが大切です。
専門医に「家族は孤立していたら介護し通せるものではありません」と言われ、家族会に入会することを勧められました。そして入会した「認知症の人と家族の会」では、会報で全国の家族とつながり、私は一人じゃないのだと感じましたが、もう一つ電話相談に救われました。認知症のとくに初期には、対面で他人様に顔を見せながら妻がおもらしをするなどとはとても話せるものでなく、電話で気兼ねせずに大泣きしながら苦悩と不安を話したものです。妻の死まで8年間、さらにいまも会員です。
私が住む市の健康センターが行っている「介護者の会」は、認知症だけでなくあらゆる病気の人を介護する家族が集まる隔月2時間の交流会です。保健師が司会ですから情報は多彩です。ここで私は病気ごとに友の会や家族の会があって支え合っていると知りました。自分が住む市町村の、母子保健や休日診療でおなじみの健康センターの、こういう仕事も認知症の家族を支えてくれます。私は6年間通い続け、妻の死後は、緊急時の対応や看取りについて体験をレポートしました。
地元の精神科病院の認知症治療病棟の家族会にも私は支えられました。毎月の例会は3時間、医師と病棟長看護師、ソーシャルワーカー、作業療法士が出席し、入院患者の家族と話し合います。妻が入院患者でなかった私は、病院の認知症学習会に参加したのがきっかけで出席を許されました。認知症の症状は信じがたいほど重くも激しくもなること、それを微量の精神薬で抑える効果が期待できること、治療後の行き先は、家庭か、施設か、他の病院か、ソーシャルワーカーが相談に乗ること等を知りましたし、家族が精神的にも身体的にも経済的にも追い詰められギリギリの努力をしていると知り身が引き締まる思いでした。私は4年間通い、妻の死後も求められてさらに4年間出席を続けました。精神科病院というとひるむ気持ちが出てくることもあるでしょうが、ここの家族会も相談できる人と場所として視野に入れておくといいと思います。
相談する人としては、健康センターの訪問指導員看護師のMさんの存在が大きいものでした。妻が激しい徘徊と言動の大混乱のただ中にあった平成13年から死まで足かけ6年間、隔週に来訪し、2時間も3時間も私の不定愁訴を聴き、相談に乗ってくれました。妻が要介護5と身体障害2級に同時になって私が取り乱したとき、一つ一つ解決策を考えましょと手助けしてくれたことは忘れられません。妻の死後も1周忌まで訪問を続けてくれ、長い介護の年月を、いわば、‘介護マラソンの伴走者’としていっしょに走ってくれました。
ケアマネジャーも足かけ6年同じ人で、息長くおつきあいするなかで、信頼関係が築けた気がします。訪問看護師とはわずか7ヶ月でしたが、妻の看取りという濃密な時間を共有し、専門性と人間性で信頼できました。
認知症は10年は覚悟しなければならない病気です。相談できる人と場所は、幅広く探し息長くお付き合いして、信頼できる‘介護マラソンの伴走者’を見つけていきましょう。
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