子どもたち(家族)に、親の認知症をどう伝えたらいいのでしょうか
【質問】
子どもたち(家族)に親が認知症になったことをどう伝えたらいいのでしょうか。できれば、家族が結束して介護をしていきたいのですが、協力を得るにはどうしたらよいでしょうか。
【回答】
家族じゃありませんか、「できれば」などとおっしゃらずに、ぜひとも結束を呼びかけましょう。私は、認知症の告知の後、入院手術を前にして、離れて暮らす子どもたちに手紙を書きました。これは大変な求心力があり、妻の入院中の嫁婿含めた家族の絆の強さは感動的でした。一例ですが、それぞれのご家庭に合った方法でぜひとも結束を呼びかけましょう。
家族みんなで母親を守るのは当たり前のことです。平成10年の入院手術前に、私は4人の子どもたちに手紙を書きました。手紙という形にしたのは、みんな働いており、3人は遠く離れて暮らしていたので、一堂に会するが難しかったからです。
「前略 つらい哀しいことを知らせなければならない。お母さんの病名が確定した。「アルツハイマー型老年痴呆」。悲しくてことばもない。」こういう書き出しでA418枚にもなる手紙には、医師の話はもちろん妻の日常生活の混乱を詳細に伝え、「介護すれば日常生活も社会生活もできる。人との話もそばでそっと口添えすればいいのだ。こうして青梅の自宅でママに人間らしく暮らしてもらおうと、私は固く決心している」と語り、「あと1週間で入院だ。これがさしあたっての関ヶ原。どう乗り切るか。・・・病室生活・・・ひとが、対話するひとが一番大切。きょうだいで相談し見舞う順番と時間、声と手紙など態勢を整えてほしい。どんどん連絡をとりあってほしい」と檄を飛ばしています。子どもたちは手紙をよく読んでくれ、嫁と長女が競い合うように見舞ったり、21日間の入院を結束して支えてくれました。
手紙はいま読み返すと、発症から4年目の妻の様子がよく分かります。「時計の盤面から時刻が言えない」「脱ぐものはすべて裏返しのまま脱ぎ捨て」「洗濯物は、取入れはできるが、たたむのと整理がこころもとない。箪笥にしまうのは大混乱」等々。改めて涙しますが、認知症4年目の記録としても貴重になっています。
しかし、認知症は長丁場の病気ですから、当初の守りたい支えようという感情を何年間も維持するのは難しいことです。妻の場合、この入院から看取りまで8年。子どもたちの生活も変化しますし、社会生活も多忙になっていきます。気持ちはあってもついついとなってしまうのも自然です。一方で、仕方ないと思いつつも、この入院から4年目には、リヤ王の心地だと私が子どもたちを疎ましく思ったのも事実です。家族の情に訴えるだけでは長期間結束はできません。主介護者として工夫が必要です。主介護者は家族介護者を結束させるオーケストラの指揮者だと思いましょう。
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