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長谷川和夫先生に聞こう! 認知症のエトセトラ 2008年03月

私のブログ 最終回です

 ブログを週1回書いてみませんか?と中央法規さんから依頼されて、「あっ、何か面白そうだな」とおひきうけしてから1年がすぎました。何とか心のなかに生まれた想いがあるときはいいのですが、まったく空っぽの頭になっているときもありました。あるいは仕事がつまっていて格闘しているときとか、何となくうつ気分にとらわれて何もしたくないときには、執筆が苦しいこともありました。
 しかし、約束したからにはと、昔の書きふるしたノート等をひっぱり出したり、無い袖なのに一所懸命ふったりして。そういうときに読者の方からコメントをいただくと元気がでますね。何回もコメントをいただいた方もいらっしゃいました。しかし、すぐ回答はできませんでした。「常にモチベーションをもつことはどうしたらいいのか?」「心の豊かさとか感性をみがくにはどうすれば?」どうしたらいいでしょう? 私もハタと困りました。 すぐ答えられません。今でも答えがでてきません。私もこれからじっくり考えつづけたいと思います。



種をまくことの楽しさ

 3月は春の訪れを全身でうけとめる暖かさを感じる月ですね。中学校の英語の教科書、第1章で「Spring has come!」と読んだ記憶があります。
 また、3月は卒業式の季節でもあります。今時分は、週末近くになると華やかな晴れ着姿の女子学生さんが卒業証書を入れた円筒をもって歩いている情景がみられます。私も先週、嘗て奉職した聖マリアンナ医科大学の卒業式に列席しました。きらきらと輝く目をした男女99名が卒業していきました。この32回生は、6年間で5,068時間の授業を受け、医学全般に亘る知識と技術で頭はいっぱいだと思います。列席しながら、自分の学長時代に、長男が修学を終えて19回生として卒業式を迎え、学長の立場で卒業証書を渡したことをふと思い出したりしました。開学以来、35周年を迎えて卒業生は3,287名です。毎年、全国で約8,000人の医師が誕生していますが、医師不足は深刻で地域の基幹病院は医療崩壊に近い現状のところが出ていることは皆さんもよく知っておられると思います。私も憂慮しているところではあります。



ある春の日に想う

 日毎に暖かさがましてきて、“春がきた”と肌で感じられる頃となりました。
 先日、所用をすませて、上野駅の公園口から車を拾って根津の近くになったとき、渋滞のために車がとまってしまいました。ふと車窓から外を見ると、小さな寺の門の傍に、次の一首がしるされていました。

生くるとも
死すとも知らず
われはたヾ
春の光に
流れてぞいく

 たんたんとして記されている句に私の心を讀まれている感じがしました。老いること、生きていくこと、そして死ぬること、重いテーマについてブログに先般書きましたが、この一句に現実のすべてがあるように思いました。



死を迎えること

 私のブログも終わりに近づいてきました。終末にふさわしいテーマとして、前回は“老いること”を語りましたが、今回は“死”について考えてみましょう。重いテーマですが、あまり気張らないで、死への想いをお互いに考えてみることも、ときにはいいことでしょう。今をよりよく生きることになりますからネ。
 前回、老いについて述べた書籍はおびただしいと書きましたが、これに比較すると死についての書籍は少ないと思いますがどうでしょう。確かに臨死体験とかターミナルケアについては書かれていますが、私たちは生きている以上、老いるのと同じように“死”を体験することはできません。
 “死”は“老い”と密接な関係があります。新聞の訃報欄をみると、多くは高齢の方が逝去されています。しかし、若い人も病いのため、事故のために死を迎えることは、不幸なことですがよくみられます。したがって、死は生のすぐ隣りということもいえるでしょう。しかし、私たちは死を“体験する”ことはまずありません。



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プロフィール
長谷川和夫
(はせがわ かずお)
認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授。専門は老年精神医学・認知症。1974年に「桜、猫、電車……」の長谷川式認知症スケール(HDS-R)を開発者して以来、常に認知症医療界の第一人者として時代を牽引してきた。最近では、「痴呆」から「認知症」への名称変更の立役者でもある。『認知症の知りたいことガイドブック』(中央法規出版)、『認知症を正しく理解するために』(マイライフ社)、『認知症診療のこれまでとこれから』(永井書店)など著書多数。
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