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長谷川和夫先生に聞こう! 認知症のエトセトラ

支えてくれる心、町、人。薬の効用に“さらに加わるもの”

認知症になっても、あなたがあなたでいられる。
支えてくれる心があるなら――。
認知症になっても、あの人があの人で暮らせる。
支えてくれる町があるなら――。
認知症になっても、私が私で生きられる。
支えてくれる人があるなら――。

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 これは私が今年いただいた年賀状で深く感じ入った言葉です。私たちが暮らしていくうえで、人、心、そして町から、支えとしての暖かさを感じました。

 さて先週、私はアリセプトをご説明しましたが、薬の効用に“さらに加わるもの”についてお話させていただきます。
 私の患者さんで、高度アルツハイマー病のYさん(83歳、女性)という方がおられます。私はYさんにアリセプトを投与して、現在もフォローしています。
 Yさんは家族と同居されていて、発病してから5年くらいになります。記憶低下は著しく、簡単な言葉のやりとりはできますが、家族が誰なのか全く認識できません。長谷川式認知症スケールは30点満点で、20点以下が認知症を判定されますが、Yさんは3点しかとれず、高度の認知症といえます。しかし、アリセプトを服用して2年が経過した現在、進行は抑制され、診療所に来られても顔色もよくニコニコと楽しそうです。「よく眠れますか」とか「食事はおいしいですか」とお聞きしても、きちんと答えられます。副作用も全くありませんので、アリセプトが体にあっているのだと思います。
 しかし、連れて来てくれたご自分の長女が誰であるかを認識できません。過去のことは全く忘れていますし、これから先のことも心にありません。まさに“いま”“ここで”という、現在だけの生活です。高齢になって過去のしがらみはなくなり、幸い経済的にも恵まれておられ、未来に対する心配もないYさんは、ある面では幸せな状態といえます。
 しかし、これは第1に支えてくださる家族の方のおかげでもあります。特にこれといったケアの方法はなくても、安定した支えをしてくださる家族の力があるのでしょう。まさに、心の支え、人の支えです。細かい点では、きっと大変な努力をされていると思いますが、この家族力が認知症の人の尊厳を支えているのだと痛感しています。


コメント


『 認知症になっても、あなたがあなたでいられ る。
 支えてくれる心があるなら――。
 認知症になっても、あの人があの人で暮らせ  る。
 支えてくれる町があるなら――。
 認知症になっても、私が私で生きられる。
 支えてくれる人があるなら――。 』

認知症の方でなくても、この様な事を感じさせてくれる人・町があれば、とても心強くて心がポカポカと温かくなりますね。素直な心を表現した、とても素敵な言葉です。私も最近町の住人の支えを感じ心がポカポカした事があります。風邪で寝込んでしまった時に、昔はすれ違いが原因で不仲だった(人はきちんと話を聞き理解しようと受け入れなければ性格などわかりません)御近所の奥さんが「節分の日だから食べて」と御見舞に巻き寿司を持ってきて下さいました。困った時はお互い様の温かい支えを感じ嬉しかったです。
自分の事しか考えていないストレス社会の寂しい世の中だと諦めないで、自分が忍耐強く一途に陰でも支える側に回っていれば自然に自分の事も理解し支えて下さるオーラが出来るのかもしれません。そういう良い連鎖反応を信じて前を見続けております。

Yさんの様に副作用がない方は不幸中の幸いですね。『過去のことは全く忘れ、これから先のことも心にない、まさに“いま”“ここで”という、現在だけの生活。幸い経済的にも恵まれておられ、未来に対する心配もないYさんは、ある面では幸せな状態といえます』
しかし、長女の方の御気持ちは「自分が娘だと忘れられている」という事に寂しくもあり複雑でしょうね…どの様にお気持ちを切り替えられたのでしょう? もし、私の母がYさんの様になったら気持ちを切り替える事は出来るかどうか未知数です。母には認知症にならない様に、なるべく認知症に関する講演会にも一緒に連れて行っています。母に講演会の感想を聞くと「分ってます。運動して、野菜も魚も食べて、新聞読んで~人と仲良くすればいいんやろ?」と言い、健康を意識してくれる様になりました。
ケアも教科書通りにはいけば楽です。
経験上、思った事ですが、自分にも公私共に大切な家族・人がいる様に、他人である認知症の方にも同じ様な「愛情」で支えていく事が1番です。
時間はかかっても進行しても、決して良い時ばかりではありませんが、それでも結果的に家族の様な温かい関係を築く事ができますので良い結果を出す事ができます。

それが人間に与えられた特権の様な気がします。



投稿者: 玉本あゆみ | 2010年02月05日 19:49

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プロフィール
長谷川和夫
(はせがわ かずお)
認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授。専門は老年精神医学・認知症。1974年に「桜、猫、電車……」の長谷川式認知症スケール(HDS-R)を開発者して以来、常に認知症医療界の第一人者として時代を牽引してきた。最近では、「痴呆」から「認知症」への名称変更の立役者でもある。『認知症の知りたいことガイドブック』(中央法規出版)、『認知症を正しく理解するために』(マイライフ社)、『認知症診療のこれまでとこれから』(永井書店)など著書多数。
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