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長谷川和夫先生に聞こう! 認知症のエトセトラ

デイケアをはじめよう! その4~回想法で楽しい時間に

 デイケアのプログラムには、回想法をとり入れてみました。
 認知症の人は、寸前のことを忘れ、最近の出来事も記憶していないことが多いのですが、遠い昔のことは比較的よく覚えています。昔の物語を話しているときには、現実の中の不安感がなくなって自信を取り戻し、生き生きとした表情になるのです。
 しかし、自発的に遠い昔の出来事を回想することは難しいので、回想のきっかけを作り支援していく必要があります。昔の写真を見ていただいたり、果物やお手玉などをテーブルに置いて手で触ったり遊んだりしながら回想に導くのです。「遠足の想い出」というテーマのときには、リュックサックや水筒、おむすびの絵などを並べたところ、全員が楽しそうに想い出を語り始めたことがありました。

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 スタッフの1人が回想に加わって、雰囲気を盛り上げることも大切です。スタッフは昔の風習や行事について、人生の先輩である人から教えてもらうといった雰囲気を作ることで、メンバーが話しやすいようにします。
 自分からは何も話が出ない人もいますが、スタッフが具体的に質問すると話ができる場合もあります。また、自分の順番のときには緊張してしまい「忘れちゃったわ」と言いながら、他の人の話を聞いていて思い出したように自分のことを話し出す人もいました。
 順番を無視して話し出す人もいます。このときは、「順番ではないから」と話すのを止めると拒否されたと思い、感情を害してしまいます。しかし、話し続けたなら本来の順番の人が気を悪くしてしまいます。こういう場面では、司会者が気をつかうところでもあります。また、テーマにまったく関係のないことを話しはじめることも見られます。そのときも否定しない方がよいでしょう。参加者の「話したい」という欲求を大切に考えます。
 歌の時間では、高齢者になじみのある昔の歌を選曲して歌詞カードを見ながら歌いました。なじみの歌であっても、題名や歌詞カードを見ても「そんな歌は知らない」という人もいます。しかし、伴奏が始まると、ほとんどの人は歌詞カードを見なくても歌っていました。一つひとつの歌ごとに思い出やその頃に流行したことについても語られました。ときには、楽器を加えて賑やかに行うのも楽しかったです。


コメント


私は、派遣を通して老健以外の病院・施設で勤務して参りました。カルテを書きながらや、一緒にお洗濯物をたたみながら束の間の時間を利用し、レクリエーション以外の時間でも「回想法」を用いたり歌を歌うのですが(歌は私にとって、三度の御飯と同じ日課の様なのでバックミュージックの如く歌っております)、歌は不思議な魔法ですね。
今迄、塞ぎこんでいた人が突然記憶を呼び起されたかの様に開眼したり、回想法も「きっかけ」を提供すると我先にと嬉しそうな表情、目を細め穏やかな表情、ちょっと、しんみりした表情で語り始められます。死期が近づいた方にも効果はあると分りましたが、回想法に於いてはセミナーを受け応用力を深めたいと思います。私も童謡も好きなので、昔の人が使っていた道具や生活風景をリアルな絵本(歌詞付き)にした物とセットになった「日本の歌百選」というCD(魔法の小道具)を購入しました。この絵本を見ながら話が膨らむでしょうし、絵を描いて頂く事も出来ます。私も癒されました。認知症の方々に楽しい一時を過ごして頂く為に色々やりたい事、出来る事の貯金をしている状態です。頑張りま~す!


投稿者: 玉本あゆみ | 2010年01月05日 15:16

来月、エリザベス・マッキンレー氏による「してもらうケア」から「ともに歩むケア」へ~スピリチュアルケアへの招待~と、題したレッスンを受講します。
日本との回想法の違いも知りたくて、とってもワクワク楽しみで、学べる機会に恵まれた事に感謝しております!


投稿者: 玉本あゆみ | 2010年02月16日 20:42

エリザベスさんの来日研修を受けてきました。
講演が終わってから聴衆者からの「5つの質問」の一人に私の質問を採用して下さいました。
私の質問は、御子息から虐待を受けた事がある認知症高齢者様が最期まで御家族との関係に修復困難だったケースについて、御本人と御家族との間に挟まった私の立場でどのような接し方をすれば良いのかアドバイスを求める内容でした。
エリゼべスさんは、御家族との再構築の必要性と、御家族よりも私が1番身近な存在であったと事を話して下さいました。私は双方にコミニュケーションをとって頂き後悔の少ないお別れ方をして頂きたかったのですが、それが私の「押し付け」になっていたのではないのか…御本人が息を引き取る直前に「ごめんね。ありがとう…」と私に残された言葉が、今でも心にズシ~ンと残っていますので、御家族と和解できないまま逝かせてしまった事に、ぶつけようのない憤りさえ感じていましたし、どこかで心の重荷になっていました。死を待ち望みながらも受け入れる事に苦しみながら、息絶えてしまった彼女に、もう一度だけ人を信用できる心を取り戻せるように守ってあげたかったのですが、救える命を助けてあげられなかったことにも居たたまれない気持ちとなり、ターミナルは御本人が選択した生き方だったのですが、私自身の考え方が間違っているのだろうか…ターミナルを選んだからって、何もせずに逝かせるのが施設のやり方なのか、パーソンセンタードケアの本質も合わせて、色々考えさせられました。でも、マッキンレーさんの一言で救われました。私は間違ってはいなかったと。
クリスティーンブライデンさんから救いを求められたマッキンレーさんは「スピリチュアル回想法」を生み出し実践しておられる第一人者ですが、ただ優しく傾聴する事を重点的に行いながら、以下のような解答を導き出せるように認知症になっても生きる意味を本人自らが見いだせるように寄り添い、ファシリテーターの役割を果たしておられますね。決して、誰にも出来る事ではありません。

1、あなたの人生で1番大きな生きている意味は?
2、生きているのは何があるからか?
3、あなたの人生における喜び、悲しみは何ですか?

自分に問うてみた時、即答出来ませんでした。
自分が答えられない事は、相手の答えを導く事なんて不可能でしょう。
私は真剣になって考えてみました。

1について。自分が輝ける活動や場所、信じられる人や笑顔で過ごせる活動や場所で生きているという事だと実感しました。

2について。家族があるから。認知症を理解し、人として深い部分で交わる事が出来るから。
そして、キリスト教。神様はいつも傍にいらっしゃると信じられる事。

3について。喜びは、信じられる嘘や隠しごとのをせずに、自分自身を理解し支えようとして下さる人が身近にいて安心出来る事。
色々な場所に行って、大事な出会いに恵まれる事、そして健康がある事。
悲しみは、自由も人も、与えられた神様からの贈り物を奪われる事。

今回、相談させて頂いた認知症高齢者さんからも、「生きてて楽しいか?何のために生きる?食べて寝るだけか?」と、アイデンティテイを自問自答させられたストレートな発言があった事を思い出しました。業務中心となってしまいがちな現場で、忘れがちな大事なスピリチュアルケアの必要性を改めて考えさせられました。体の衰弱とは逆行しても精神面が安定すれば、穏やかにこの世ともお別れをして死を迎えられる事ができるでしょう。今後、スピリチュアル回想法やカウンセリングはもっと必要とされるばきですし、その世界にも理想や幻想ではないキリスト教での考え方も取り入れられるべきだと思っています。

マッキンレー様とも、(私にはお名刺がなかったので)笑顔と笑顔の交換をしてきました。
お目にかかれて本当に良かったですし、心が通じていた事に安堵しました。疑ったり構える事がなく、もっと傍にいたい…オーストラリアに永住したいとさえ思いました。人間の心は複雑化しておりますが、リラックスできるお人柄には長谷川先生に似た印象を受けました。
とても落ち着いた尊敬できる方です。


投稿者: 玉本あゆみ | 2010年03月22日 12:13

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
長谷川和夫
(はせがわ かずお)
認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授。専門は老年精神医学・認知症。1974年に「桜、猫、電車……」の長谷川式認知症スケール(HDS-R)を開発者して以来、常に認知症医療界の第一人者として時代を牽引してきた。最近では、「痴呆」から「認知症」への名称変更の立役者でもある。『認知症の知りたいことガイドブック』(中央法規出版)、『認知症を正しく理解するために』(マイライフ社)、『認知症診療のこれまでとこれから』(永井書店)など著書多数。
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