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長谷川和夫先生に聞こう! 認知症のエトセトラ

認知症介護のストレスを減らすために その4

 前回に引き続き、もう1つ介護のストレスを軽くする方法を述べます。
 それは笑うことです。
 認知症になると、その原因疾患(アルツハイマー病など)のために、物事の理解や判断、暮らしが難しくなります。しかし喜んだり、悲しんだり、楽しんだり、愛おしく思ったりする感情、あるいはフィーリングは保たれていて、人によっては以前より鋭くなっています。そこで、つらい時や困った時、苦しい時にも笑いを忘れないこと。ユーモアを忘れないことが大切になってきます。

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 ドイツではユーモアを「にもかかわらず笑うこと」と定義します。逆境にあったとき、苦しい状況であるにもかかわらず笑うというのです。苦笑いとか、ニタニタ笑うのではなく、口を大きく開けて哄笑、爆笑するわけです。実のところ、私自身そんなに大声で笑うことはあまりないのですが、時におかしいことがあると「ワッハハハ!」と笑います。私宅の近くに中学1年の男子の孫が住んでいますが、この子と遊んだりしているときは、思わず腹の底から笑いこけてしまうことがよくあります。今詳しいことは思い出せないのですが、それくらい些細なことで笑えるのです。
 ある若年期認知症の方が書かれた本を読みました。その終わりに「笑って下さい。介護をされる方に是非笑って下さい。と言いたいのです」という言葉がありました。つらい喪失感をもっておられる方からの言葉ですよ。過去の思い出も失われ、自分の精神的な資産を次第に失っていく状態にありながら「笑いましょう」とおっしゃるのです。
 その後、その方とお会いする機会に恵まれました。実際お会いしてみると、本人も介護する奥様も、終始ニコニコして私と話をされます。何ともいえない温かさに包まれました。介護している夫人が講演の中でこう述べました。
 「家の台所と居間のところを時々グルグルと歩き回ります。2時間くらい歩き回ったところで私が声をかけます。『お疲れ様でしたね。さあコーヒーを入れたから一休みして下さいよ」』してテーブルに2人で座って『アッハハハ!』と笑います。そしてコーヒーをいただくんですよ。」
 私は何というすごい物語り、何という素敵なロマンスだと思いました。
 笑いは身体の免疫能力を高めて健康にもよいといいます。そしてストレス発散にも良薬でしょう。お2人の微笑をたとえた表情、笑いながら話し、そして聞いているお姿には名状しがたい言葉では表現できないあたたかい光がありました。
 これまで、話したことをまとめますと、認知症介護のストレスを減らすためには、
(1)認知症の人の気持ちを理解すること
(2)介護を一人で抱えこまないこと
(3)笑うこと
です。これらは簡単なようで、実は難しいことです。だからこそ、さまざまな人と交流を持ち、外の世界とのつながりを大切にしましょう。このブログも、その1つとなれば幸いです。


コメント


本当に「笑う門には福来る」だと実感します。
自分がどんなに辛くて悲しい事があっても、悩みをもった人や認知症の内的世界の中で寂しい思いをされておられる方達、御家族と離れて寂しい気持ちを我慢して施設での生活を過ごしていらっしゃる人達を笑わせる事、彼らの笑顔をみるだけで、自分の心も慰められ自然に立ち直っている自分を発見します。テレビを見て笑ったり、人とじゃれて笑ったり、笑う事は、確かに良薬です。
どうせ、生きるなら「可笑しくてケラケラ笑う」「嬉しくてほほ笑む」「相手を労いほほ笑む」「春の光が心にさしたかの様にほほ笑む」こんな時間が多い方が良いに決まっていますよね!
しかし、ユーモアにも、吉本新喜劇の様な御笑いや松竹の様なもの等、様々です。
そして残念な事は、人をからかったり侮辱に近いユーモア、品やセンスに欠けたユーモアが所々に蔓延っており、私も時々そんなユーモアに出会い落胆します。私は幸せな相互作用があるユーモアを身につけていける様に修行して参ります。

今後も、素直さを忘れずに、自分の感性をツルンツルンに磨いて参ります。
長谷川先生の笑顔は、みんなの気持ちを温かくしてくれます。「笑う門には福が来ました」有難うございます。


投稿者: 玉本あゆみ | 2010年01月03日 08:54

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プロフィール
長谷川和夫
(はせがわ かずお)
認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授。専門は老年精神医学・認知症。1974年に「桜、猫、電車……」の長谷川式認知症スケール(HDS-R)を開発者して以来、常に認知症医療界の第一人者として時代を牽引してきた。最近では、「痴呆」から「認知症」への名称変更の立役者でもある。『認知症の知りたいことガイドブック』(中央法規出版)、『認知症を正しく理解するために』(マイライフ社)、『認知症診療のこれまでとこれから』(永井書店)など著書多数。
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