鎌倉の小径
鎌倉駅西口に出ると小さなロータリーがあり、植え込みの楠の新緑が迎えてくれます。左手に御成商店街右手に時計台小公園を見て直進、信号を渡って紀伊国屋。そのままとんとんと行くと知る人ぞ知るスターバックスのカフェ。
ゆったりとしつらえられた店内、テラス席も備わったまさに憩いの場所。ここは漫画家の横山隆一さんの自宅のあったところで、アトリエがミニギャラリーとして残され、土・日にはオープンしています。庭の花々、プールもそのままに残されて、テラス席でのお茶はまた格別の趣があります。
さて出発。古びて街にすっかりなじんだ市役所、ここの植え込みのバラ、ボタンは実に見事です。1000個にも及ぶ植木鉢の季節の花々は職員の丹精のたまもので、一見の価値あり。
市役所脇の御成隧道越しに見る佐助谷の景観は山がいっぱいに広がり、夏にはトンネルの入り口に葛の茎がトロトロと垂れ下がって風に揺れると、いつも足を止めて頬に涼風を浴びながら暫し見入っています。
トンネルを出て33歩、アジサイのある左手の石段を6段上がってちょこっと歩いて12段、緑色のフェンスに囲まれた小径を緑にかかえられるように山に沿って進むと閑静な住宅地に。土手には季節の草がびっしりと生えて春には花大根の紫と草黄の鮮やかな黄色の競演が見られますが、今は野生のホタル袋がひっそりと咲いています。
やがて左手に見えてくる異空間とも思える瀟洒な門とそれに続く緩いカーブの登り道。両側の石垣には苔がびっしりと生えて、その上に盛り上がるツツジの植え込みは優に5メートルを越えると思われる高さ。御成山から続く山際の植裁はサクラ、ツバキ、アジサイ等、緑の山モミジと赤い葉のモミジが目を引き、招かれるような風情の大谷記念美術館の入り口です。
佐助のひと山を独占したよく手入れされた庭園、ゆっくりと作品にふれる至福のとき、晴れた日には庭やサンルームからきらきらと光る相模湾が見通せます。この季節、頭をからっぽにして“小雨にけむる緑の空間にほっこりと身を沈めてみる…”のも、ありでしょうか。
コメント
市役所の先の御成山のトンネルには思い出があります。雨上がりの夕方、ふとトンネルの上を見ると見事な虹がかかっていました。足を止めてしばらく見ていると、足早に歩いてきた中年の紳士が不審そうに空を見上げ、「ほう、虹ですね」とおっしゃって一緒に虹を眺めたのでした。心の中があたたかくなって、「somewhere over the rainbow ]と口ずさみながら家に帰りました。
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