つぐみのピーちゃん
お弁当の献立を立てていたある日、今回は奮発してメインとなる料理に牛肉を使うことにして肉屋さんへ行きました。
店頭の肉を眺めて頭を悩ませたすえ、ちょっと良い牛肉を注文。何しろ決められた予算のなかでのやりくりなので、いつもお財布の中身とにらめっこです。いつものお店のお兄さん、「予算は大丈夫ですか」と心配顔。
配達を頼み、店を出たその帰り道、農協市場のおばちゃんたちが「曲がっているけど持っていって」と、きゅうりや茄子を持たせてくれました。ベルの会は地域のお店が私たちの懐を心配してくれて、こんなやりとりもしばしばです。
そうした温かい気持ちのこもった食材を、私たち調理スタッフが利用者に思いを馳せて調理し、配達のメンバーが「お元気ですか?お弁当です」と声をかけてお届けする…。
人の心がつながった「糸」となって、支え合っていることをつくづく思い知らされます。
ふと、数年前の野鳥との出会いを思い出しました。
秋も深まったある日、庭の隅につぐみが来ているのを見つけ、テラスからチーズのかけらを投げました。少し躊躇していたものの、つぐみはトントントンと、チーズの側まで来てついばんでいきました。
次の日も次の日もつぐみは現れ、私はチーズを投げる距離を縮め、ついに目の前まで来て食べてくれました。こちらは「つぐみのピーちゃん」と勝手に名前をつけ、毎朝チーズやベーコンの朝食をもらいに来るのを楽しみに待っていました。
朝、カーテンを開けると林からスーッと飛んでくるピーちゃん。何だかわかりあえる(?)仲になったように思いました。
年が明けてもピーちゃんとの仲は続きました。そして春、風が少し暖かくなった三月の始め、ピーピーとけたたましい鳥の鳴き声がしたので窓から庭を見ると、なんとピーちゃんがこちらに向かって羽を羽ばたかせ、ほんとうにダンスのように唄いながら踊っていました。必死になって踊り唄う姿はおもしろくもあり、私に何かを伝えているようにも思えました。そして、その翌日からピーちゃんはわが家に現れなくなりました。
きっと、「もう、私は渡っていくから、仲良くしてくれてアリガトネ」とお別れに来たのかもしれません。後々そう考え、胸の熱くなる思いがしました。
こんな野鳥と心を交わした喜びは、人間どうしの心のふれあいにも共通するものがあると考えた、小さな出来事です。
コメント
父の家の庭にもツグミが来て、よく茂みを歩く姿を見ましたが、チーズ!ベーコン!ずいぶんグルメなツグミですね。鳥ともお友達になれる自然児?のSさんだから、お肉屋さん、魚屋さん、そして農協市場の人達とも仲が良くて、いい材料と、オマケまで仕入れてあのように彩り豊かなお弁当をプロデュースしているのですね。拍手!
ピーちゃんとのお付き合い、ほほえましく、こころ温まる思いで読みました。
実は私、明け方鳥の鳴き声で目が覚めて寝不足気味と愚痴っていたのです。そんな狭い了見に恥ずかしくなりました。
自然環境に恵まれた地に住んだことに感謝し、野鳥とも仲良くして、心豊かにいきたいものです。
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