「とんだ失敗!…でもね」―とある日の調理場より
午後3時半、お弁当98個が風呂敷に包まれてセンターを出て行きました。
「やれやれ皆様、ご苦労様でしたね」とテーブルを囲んでお茶の時間。
「あら、これおいしい!」「この煮物少し薄かったかなぁ?」などと、“作品”の吟味と反省がなされます。
でもみんなの楽しみは、やはり本日の「甘味」。午後の調理、盛り付け、後片付けなど怒涛(?)の作業の後には、お茶とお菓子が何よりの楽しみです。
この頃にセンターの電話が鳴ると、だいたい配達者からで、「お留守ですが…」といった電話です。
事前のお知らせがない時は「何かあったかしら」と一時心配しますが、たいてい再度の訪問で利用者の手にわたりひと安心。そんなわけで今日も電話が鳴りました。
「ハイ?」「あらどうしましょう!」「とんだことを…」
なんと、お楽しみの甘味「桜冷菓」が入っていない!?
今どきの若者なら「マジかよ」「ウッソー」という事態。
「きれいな名前のお菓子で、楽しみに箱を開けたけれど」とのお言葉に、「すぐにお届けに参ります」と、パソコンの地図を頼りにマイバイクで臨時の配達に向かいました。
お菓子とも言えないほど小さな甘味一つお届けもねえ…と、途中の花屋で野の花の小さな束を買い求め、めざすお宅に到着。
Мさんは「まあ、わざわざ申し訳ないわ」と言いつつも、早速「ほら、ネ」と、お弁当箱のふたを取ります。
「あらら…」。一瞬言葉をなくす光景でした。
「こんなことは17年お弁当作りをしていて初めてです。本当にごめんなさいね」
小さな甘味をお弁当箱のポッカリ空いた穴に入れた後、「お届けする荷物があんまり小さいので…これも、ほんの気持ちで」と花を差し出すと、「まあ! いいのかしら。でも嬉しいわ」と喜んで受け取ってくださったМさん。
なんと、美しいカップに苺ジャム入りの紅茶と、チョコレート1粒を添えて、靴脱ぎにいすまで用意して待っておられたのでした。
そう、これがベルの会ね。
鶯の啼く夕日の道をゆっくりバイクを走らせ、家路につきました。
コメント
心あたたまる話ですね。
癒されました!
いや~いい話ですね。
利用者さんと提供する側のあたたかい気持ちがいつもあるからのエピソードだと思います。
※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。