薬物性の下痢
【Q】
私は、62歳の女です。最近下痢が続き、体力的にも落ちているように思います。下痢が始まったのは、2週間ほど前からです。風邪を引き、扁桃腺が腫れて病院に行ったのですが、その頃より下痢が始まりました。風邪はよくなったのですが、その後胃の痛みがあり、胃の薬をもらって飲んでいます。胃の痛みと下痢は関係しているのでしょうか。
【A】
この方の場合、風邪、胃の薬がキーワードとして挙げられます。風邪症状として、下痢が起こっていることも考えられますし、扁桃腺炎の治療に抗生剤を服用したのであれば、その副作用のため腸内で消化を助けてくれる細菌が死滅してしまい、下痢になっている可能性もあります。また、胃薬によっては前述した副作用を持っている可能性があります。原因がどれかひとつではなく、全部という可能性もあるわけです。
そこで、まず下痢の症状が出現したときをもう少し詳しく確認しました。
「風邪の症状は、喉の痛みと熱、咳でした。下痢が始まったのは、熱が出て病院に行ってからです。胃の痛みもそうです。病院では解熱の座薬と抗生物質が処方されました。おそらく胃の痛みは抗生物質のせいではないかと思います。下痢と胃の痛みはほぼ同時に始まりました」
ということでした。胃痛と下痢が抗生剤の副作用による可能性は大きいのですが、現在も薬を服用しているかどうか、確認しました。
「抗生物質は10日間飲んで、喉が完全にきれいになって止めました。止めて3日ほどですが、咳はまだ少し出ます。胃薬は1日3回飲んでいます。胃薬の名前はわかりません」
と、おっしゃいました。抗生物質を中止してまだ3日しかたったいませんから、その副作用だったかどうかはまだ判断がつきかねます。そこで、主治医に下痢のことは相談したかどうか聞いてみました。
「薬をもらってから1回行きましたが、その後は『ひどくなったらまた来なさい』と言われただけで行っていません。そのときは、下痢は風邪のせいと思っていたので風邪がよくなれば治るだろうと思って、特には話しませんでした」
ということでした。
そこで、そのほかの生活について聞いてみました。食事は喉の痛みもあったため、お粥などやわらく煮たものが中心で、消化のよいものを食べています。熱や腹痛など、ほかの症状はありません。体重も減ったということはないようです。風邪を引く前は外出する用事が多く、とても疲れていたということですが、精神的なストレスなど、特に緊張した精神状態にあるといったことはなさそうでした。
1日2回ほどの軟便の下痢のため、多少肛門が荒れた感じがするので、梅干しを入れてお茶を飲むようにしているとのことでした。
対処としてはご本人なりに一番よい方法を実践していらっしゃるように感じました。できれば、風邪で受診した医師を受診し、下痢のことを報告することをおすすめしました。そのとき、いつから、どのような便が、何回くらい出るか報告できるようメモしていくこと、また薬の服用状態もそのメモに一緒に残すように話しました。
今すぐ家でできることとして、腹部を暖めること、それからヨーグルトを食べること、また腸内細菌の入った整腸剤を服用することを勧めました。腹部を暖めることは腸の働きを助けます。また、ヨーグルト、整腸剤によって抗生物質で痛められた腸内細菌を増やすことができるからです。受診をすれば、整腸剤は処方される可能性もあると話しました。
下痢は体力を落とすので、長く様子を見てから受診するのではなく、状態に変化がなければ1日から2日以内に受診することを勧めて電話を切りました。
出典:西村かおる著、『こちら、お漏らし110番―排泄とそのケアにズバリお答えします』、2000年、中央法規