排尿困難
2012年11月15日 09:10
【Q】
副作用で排尿困難を訴える患者さんがいますが、なぜ起きるのでしょうか。
【A】
排尿困難や尿閉といわれるのは、下部尿路閉塞症状である排出障害です。一般的には前立腺肥大症のような下部尿路閉塞疾患があって、それに薬物の作用が加わって引き起こされることが多いとされています。排尿は、膀胱内圧の上昇と尿道内圧の低下によって起こります。
膀胱内圧により尿道内圧が高い状態だと尿閉となります。排尿が起きるためには、尿道内圧を超える膀胱内圧が必要とされます。排尿筋の収縮障害を起こし膀胱内圧を上昇させず、尿道構成筋の収縮亢進を起こして尿道内圧を高める薬物は、排尿困難、尿閉の原因となります。
排出障害を起こしやすい薬物として、多くの向精神薬がリストアップされています。ベンザミド系の抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬のフェニトイン、フェノバルビタール、抗パーキンソン薬、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬、抗不安薬などです。
クロルプロマジンのような抗コリン作用の強い低力価の抗精神病薬が、最も排尿困難、尿閉を起こしやすいとされています。
これらの薬剤は、排尿筋の弛緩作用があり、膀胱の収縮障害が起きると考えられています。精神科領域では、抗精神病薬に抗コリン作用のある抗パーキンソン薬が併用されることで、排尿困難や尿閉となったケースが多いのではないかと思います。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011。