水中毒
2012年11月14日 09:10
【Q】
水中毒と向精神薬の関係について教えてください。
【A】
水中毒と抗精神病薬の完成については、日本とアメリカのガイドラインで見解が微妙に分かれています。米国精神医学会治療ガイドラインの「統合失調症」では、「精神病が誘発する多飲」という項で「精神病誘発性多飲の原因に抗精神病薬が関与しているかどうかは不明で、薬物療法の中止も行われてきた。現在推奨されているのは、精神病と飲水をコントロールすることである」と述べられています。
一方、日本の精神医学講座担当者会議ガイドラインの「統合失調症」では、定型抗精神病薬の副作用の項に「多飲、水中毒、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)」が位置づけられています。しかし、原因についての記述はなく、「clozapineが多飲患者に有効であることが知られている」という記載があるのみです。
副作用の項に位置づけられているとはいえ、抗精神病薬と多飲・水中毒との関係は判断が保留されているようにも思えます。
薬剤添付文書では、ほとんどの抗精神病薬、抗うつ薬の副作用としてSIADHがあげられています。SIADHは低ナトリウム血症を引き起こしますから、副作用としての水中毒を認定しているともいえます。
しかし、対照群を設定した研究でも、抗利尿ホルモンの上昇は確認されていないという見解もあり、十分なエビデンスはないというのが実状のようです。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011。