口渇
2012年11月13日 09:10
【Q】
なぜ、抗精神病薬や抗うつ薬での治療がなされると、患者さんは口渇を訴えるのでしょうか。
【A】
入院初期、抗精神病薬を服用し始めた患者さんの多くは、口渇を訴えます。これは、抗精神病薬の抗コリン作用のためです。抗コリン作用は、抗精神病薬が副交感神経に影響を与えることで起きる副作用です。
抗精神病薬は、自律神経系を遮断する性質をもつ薬物で、特にフェノチアジン系の薬物はこの作用が強く出ます。ハロペリドール、スルピリドなどは、抗コリン作用による副作用の頻度が低いといわれています。
受容体でいうと、抗コリン作用はムスカリン性アセチルコリン受容体遮断による副作用と考えられます。副交感神経の神経伝達物質の役割を果たすのは、アセチルコリンです。その受容体には、ニコチン型とムスカリン型の二つの方がありますが、唾液腺、消化器、心臓などの副交感神経受容体はムスカリン型です。
口渇は、抗精神病薬によって副交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンのムスカリン性アセチルコリン受容体との結合が遮断されることで起きると考えられています。唾液腺上におけるこの受容体の遮断は、唾液線からの分泌を減少させ口渇を引き起こすのです。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011。