患者が眠気を訴えてきた
【Q】
初めて入院する患者さんが、抗精神病薬の服薬を開始したら眠気を訴えるようになりました。どのようにかかわったらよいでしょうか。
【A】
抗精神病薬の多くは、ヒスタミンH1受容体の遮断作用をもっています。この作用とノルアドレナリンα1受容体遮断作用が、抗精神病薬の鎮静-睡眠と関係していると考えられています。なお、常用量でアドレナリンα1、ヒスタミンH1の両受容体を遮断する作用が強いとされている薬剤は、クロルプロマジン(ウインタミン、コントミン)、レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)、クエチアピンフマル酸塩(セロクエル)です。
眠気は、抗精神病薬の服薬初期に出現しやすく、2週間以内にはほとんどの患者さんがこの副作用を体験していると思います。眠気、傾眠の程度がより強くなったのが過鎮静と呼ばれる状態です。薬物療法の開始後早期に眠気を訴えることは、薬物の効果が現れはじめた証拠と、過去には肯定的に考えられていました。大量投与による過鎮静でなければ減薬せずに経過を見るのが一般的だったのです。時間の経過とともに次第に薬になれてくるようで眠気が弱くなることもありました。
しかし、近年は、抗精神病薬を鎮静的に使うことへの批判があります。眠気も軽い副作用と考えずに、場合によっては薬剤の変更、減量を考えなければならないと思います。
外来で薬物療法が開始される場合には、眠気やアカシジアなど、服薬初期に現れる副作用について十分説明しておかないと服薬中断の原因となります。
看護として関心を払わなければならないのは、鎮静-睡眠の程度です。眠気程度の軽度の鎮静なのか、刺激しなければ覚醒しないような過鎮静状態なのか、その程度を把握しておく必要があります。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編『看護者のための精神科薬物療法Q&A』中央法規出版、2011