初対面の利用者との会話
【Q】
初対面の利用者さんとの会話が苦手で、いつも沈黙の時間が長くなってしまいます。何かよい方法はないでしょうか。
【A】
初対面の人とさりげない会話をするのは、誰にとってもむずかしいものです。特に、普段から特定の人以外と接する機会が少ない人にとっては、億劫にさえ感じることもあるかもしれません。利用者の中にも、これまで自宅に一人で暮らしていて、人と接する機会がほとんどなかったという人もいますので、お互いに何を話したらよいのかわからず、沈黙してしまう状況も不思議ではありません。
会話には、大きく分けて「何を話したらいいのかわからない」というむずかしさと、「つい話し過ぎてしまう」など、話すことと聞くことのバランスのむずかしさがあります。
この2つの課題を解決する方法の一つに「共想法」があります。共想法では、あらかじめ設定されたテーマに沿って写真やイラストを用意して持ち寄り、それに関する「話題」を提供し合うものです。実際に話をするときは、話す順番と時間を決め、話が終わったら必ず質問をするというルールになっています。
つまり、共想法では、「何を話したらよいかわからない」という課題を解決するために、あらかじめテーマを決めてそのテーマに沿った話をします。また、聞くことと話すことのバランスをとるために、話す時間と順番を決め、話し手と聞き手をスムーズに交代します。さらに「質問」の時間を設けることで、「何を質問しようか」を考えながら聞くことになり、集中して話を聞くことができます。
共想法は、初対面の高齢者同士はもちろんのこと、職員と利用者が、お互いのよいところや面白いところを発見することにも活用できます。慣れるまでは、ぎこちない感じになってしまうかもしれませんが、共想法を繰り返すことで、自然に相手の興味や考え方、視点などが理解できるようになり、会話をスムーズに楽しく行うことができるようになると思います。
出典:大武美保子著著、『介護に役立つ共想法―認知症の予防と回復のための新しいコミュニケーション』、【第1章】中央法規出版、2012