切迫性尿失禁
【Q】
自分のことでご相談いたします。71歳の女です。お恥ずかしい話ですが、トイレまで間に合わず困っております。気をつけて早め、早めにトイレに行くようにしていますが、トイレの近くで出てしまい、衣類も廊下も汚してしまうことがたびたびあるのです。「年のせい」とあきらめてはおりますが、ひょっとしたら何か方法があるかと思い、お電話いたしました。
【A】
「トイレまで間に合わない」と一言ですむ状態でも、原因としては多くの可能性があります。
まず、トイレに行くまでの動作がスムーズに行えないために間に合わないことがあります。具体的には、痛みやまひなどによって、移動がスムーズにできない、あるいは手先がうまく使えず衣類を上手に脱げないために、間に合わないといったことです。したがって、ADL機能やトイレの位置、着ている服などを確認することが必要です。
この方の場合は当てはまりませんが、認知症などによってトイレがわからず探しているうちに間に合わなくなるといったことも考えられます。精神、心理状態の確認も必要なのです。
何ができないのか、どうしてできないのかが確認できると、環境を改善することで良い結果が得られることがあります。
ADLや知的な障害によって、排泄動作がうまくできないためトイレに間に合わない場合は、「機能性失禁」と呼びますが、膀胱・尿道の障害によって起こる「切迫性尿失禁」「腹圧性尿失禁」の可能性も確認しなくてはなりません。
尿意を感じてトイレに行くまでに膀胱が勝手に収縮して尿を出してしまうのが「切迫性尿失禁」。尿道が緩く、歩く動作によっても尿が押し出されてしまうのが「腹圧性尿失禁」です。
切迫性尿失禁は、強い尿意をともなうので、尿意の強さを確認することで、ほとんど区別が付きます。腹圧性尿失禁ですと、咳やくしゃみなどでお腹に力が入ったときに漏れる症状もありますから、そのほかのときに漏れることがないかどうかも確認します。ただし、混合型と呼ばれる、切迫性と腹圧性の両方がある方も多いので、注意深く、どのようなときに漏れるのかを聞き取るようにします。
切迫性尿失禁は、脳血管障害やパーキン病などの神経疾患から症状が起こることもあるので、既往歴、現病歴も確認します。腹圧性尿失禁は、尿道を締めている骨盤底筋の緩みの原因となる出産経験、肥満、便秘の有無も確認します。
切迫性尿失禁は、膀胱の緊張を取る薬の服用、腹圧性尿失禁は、肛門、膣を締める骨盤底筋体操などによって治療します。混合型は、切迫性、腹圧性の両方の治療を重ねて行います。
出典:西村かおる著、『こちら、お漏らし110番―排泄とそのケアにズバリお答えします』、中央法規出版、2000年