なぜ患者は服薬を嫌がるのか
2012年09月03日 09:10
【Q】
薬を嫌がる患者さんにはどのように接すればよいのでしょうか。
【A】
精神科では、薬を拒む患者さんに出会うことがよくあります。しかし精神科の患者さんに限らず、“薬を飲む”ということに対しては誰でも何かしらの抵抗感が生まれて当然です。そもそも「拒薬した」「怠薬した」というのは、「医療者の指示どおり服薬を行うことが絶対」という考え方が根底にある、医療者の一方的な見方ではないでしょうか。このようなことが“飲ませる対飲ませない”のパワーゲームを引き起こしてしまいますし、本人の同意によらない入院も認められている精神科では、特にそういったやりとりが起こってしまいがちです。薬を飲まない患者さんに対して、医療者ではいろいろな手段を使って飲んでもらおうと必死になりますが、それは悪循環の始まりかもしれません。そういった患者さんを前にしてまず考えなければいけないことは、なぜ患者さんが薬を飲まないのかという理由を明確にすることです。そしてその理由を大切に扱うことです。無理やり飲むことを勧めるのは信頼関係を損なう可能性があり、その後の治療に大きく影響します。強制的な治療を受けた経験は患者さんの心に刻まれ、いくら必要な治療であっても苦い印象として残ってしまいます。いったんそのような印象がつくとそれを変化させるのは困難ですので、可能な限り治療の開始とともに、患者さんは主体的に治療へ取り組む意識を高める介入が必要となってきます。
出典:辻脇邦彦・南風原泰・吉浜文洋編、『看護者のための精神科薬物療法Q&A』、中央法規出版、2011年